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ウォール街の誤算。「ヒラリー退場」による超円高・株暴落は起こるか?=吉田繁治

なぜヒラリー・クリントン候補は米国民から嫌われているのか?

トランプ氏は、強権的な政治を行っているロシアのプーチンを「トランプ的な大統領」であると称えています。日本に関しては、円安とTPPへの反対を言い、駐留している米軍を引き揚げる(または応分の軍事費の負担を求める)という。

クリントン氏(夫人)は、以前から「日本嫌い」です。そのぶん親中国でもある。たった10カ月で205億円も集めるクリントン財団へは中国企業からの政治献金が多く、日本からは少ないからかもしれません。夫のビル・クリントンも親中国でした。次いで献金が多いのはアラブです。

しかし、初の女性大統領を狙うクリントン夫人には「国民的な人気」がない。理由は3つです。

(1)20年以上前のクリントン大統領時代から続き、夫人には新鮮さがない。政治には、わが国における過去の遷都のような新鮮さが必要です
(2)公的なメールのやりとりを私的なメールアドレスで行っていた。これについてウソの証言をしていたことが、後で暴露された
(3)投票を本音で行う米国の保守層には、女性大統領を忌避する向きも多い

クリントン、トランプいずれも日本とっては歓迎できる候補ではありません。その点、オバマ大統領はリベラルでした。米国大統領の任期終える前に、広島に来たくらいです。
(注)現代のリベラル(自由主義)は多義的ですが、元は、欧州の貴族主義と社会主義(官僚主義)に対し、市民による自由な統治を重んじるものでした。欧州は貴族主義ですが、日本の明治以降の伝統は財務省が代表するところの官僚主義です

新大統領に対し、安倍首相はどう対応するか?

安倍首相は新大統領に対しても、参勤交代のように「幕府」である米国を訪問し、恭順の意を示すでしょうか。

現職のオバマ大統領に対しては、2012年10月から数十兆円の「円売り・ドル買い」で、$1=80円の円高を120円付近にまで下げたのです。

資金残高129兆円(16年3月)の年金基金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立法人)は、事実上わが国のSWS(国家ファンド)です。ノルウェーの$5775億(57兆円)の2.2倍の規模で、1位の米国社会保障年金信託基金に次ぐものです。

2014年10月には、運用の基本ポートフォリオ(分散投資)で、国内株式と外国株式の構成比を、ともに25%へと倍増しています。外国債券も15%に増やしたのです。外国証券と言っても、90%は米国のものでしょう。GPIFは株式で約15兆円、米国債で10兆円の買いを行っているのです。両方で、25兆円のドル買い、つまり米国への資金供与です。

2012年10月に、民主党の自滅から安倍政権が確実になって以降、50兆円くらいのジャパンマネーが米国に行っています。
(注)ドル買の超過分、日本の資金を米国に与えることと等しい

政府の円安誘導の方法は、政府が動かせる資金での、市場に買い主体を公開しないドル買いです。$1=80円から120円(2016年2月まで)の円安の時期までに、50兆円の円安誘導が行われています。

Next: トランプ氏に従うなら、日本は「ドル売り・円買い」をすることになる

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