「Qアノン」の投稿の特徴
「Qアノン」の投稿の際だった特徴は、情報を直接伝えるのではなく、「なぜ~だろうか?」と質問形式になっていることだ。ひとつひとつの投稿のリサーチから得た情報を集めると、とんでもないものが見えてくるというように仕掛けられている。
それはまさに、なぞ解きに興じていると、思いもかけない世界に迷い込んでしまうというという感じのものである。
そして、このような「Qアノン」の投稿にしたがってリサーチすると、アメリカを国民の手に取り戻す「アメリカ第2革命」の旗手として、トランプを崇めるシナリオに誘導される。それは、「Qアノン」の投稿に誘われて謎解きを楽しんでいると、驚愕するような世界の真実が見えてきて、思わずトランプの熱烈なファンになるという実に巧みな仕掛けだ。
「Qアノン」は、最初はネットの掲示板の書き込みに過ぎなかったものが、トランプの岩盤支持層の過激な革命思想として一人歩きし、暴力も含めた具体的な行動を誘発するようになったのである。
「Qアノン」の思想は、保守やリベラルという既存の枠では単純に括ることのできない反エリート主義の陰謀論である。世界の出来事は、「ロスチャイルド」や「ソロス家」などの悪魔崇拝主義者の勢力が陰で操り、単一の政府が支配する社会主義的な「ニューワールド・オーダー」を実現するために活動しているとする、いわば陰謀論的な世界観だ。
いまこれが、アメリカのみならず世界中の抗議運動で拡散しているのだ。
「Qアノン」の正体
では、いったい「Qアノン」とは何者なのだろうか?
当初は単なる陰謀系オタクによるいたずらか妄想にすぎないと思われていたが、そうではないことは間違いない。トランプ政権の内部にいる人物と考えたほうが合理的が情報が多いからだ。
「Qアノン」の正体を示唆するいくつかの情報がある。
まず、ポール・E・バレー陸軍退役中将という人物が、カナダのネットラジオのインタビューに答えて「Qアノン」の背後にある組織について語っている。トランプはCIAやFBIなどの「ディープステート」の情報をまったく信用していないので、米軍の情報組織から集められた人員によって構成された「アーミー・オブ・ノースバージニア(北バージニア陸軍)」という組織に依存しているという。これは800人ほどの組織だ。「Qアノン」はこの組織のメンバーのようだとしている。
しかしこれは、ネットラジオに出演した退役中将の発言にしかすぎない。なんらかの具体的な証拠に基づく発言ではないようだ。
この証言以外にも多くの憶測があるが、「Qアノン」の正体の決め手になるようなものは見当たらない。投稿された内容から、「Qアノン」はトランプ政権に近いグループであることは想像できるが、「Qアノン」の正体はいまだに謎に包まれている。
正体を示唆する具体的な調査
しかし、トランプ政権の末期になって、「Qアノン」の正体を示唆する具体的な事実が注目されている。
それらは、最近公開されたものではない。「Qアノン」の政治運動が拡大するにつれて、多くの人々がその正体の真剣なリサーチを始めた。その過程で、いままでほとんど注目されていないかった過去の記事が発見されたのである。
それらは、「国家安全保証局(NSA)」の元メンバーであったエドワード・スノーデンの証言をスクープした英大手紙、「ガーディアン」の記者で著名な調査ジャーナリストのグレン・グリンワルドが立ち上げたメディア「インターセプト」に掲載された一連の記事が中心だ。
それらのいくつかは、「Qアノン」が投稿を始める前に書かれた記事であった。
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