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第一級の情報工作「Qアノン」とは何だったのか?その正体と戦術、次の一手=高島康司

NSAの「Qグループ」

それらの一連の記事では、すでに2013年の時点で「NSA」には「Qグループ」と呼ばれる部隊が存在していた事実を明らかにしている。

エドワード・スノーデンが「NSA」の機密情報を持って香港に渡り、グレン・グリンワルドを通して「ガーディアン」に情報を暴露したのが2013年であった。この情報によって「NSA」は「PRISM」と呼ばれる盗聴システムを持っており、すべてのアメリカ国民のスマホが盗聴できることが明らかになった。

この暴露はすさまじい衝撃を当時のオバマ政権にもたらした。

「Qグループ」とは、機密情報を持って逃亡したエドワード・スノーデンを追跡する「NSA」の別動隊のことであった。このグループが、現在の「Qアノン」の中核になっているのではないかと見られているのだ。

もっと具体的な証拠

しかし、これはまだ憶測にしか過ぎない。「Qグループ」が「Qアノン」の中心的な母体であることを示す具体的な証拠は提示されていない。しかし、2017年に書かれた「インターセプト」には、「Qアノン」の核心ではないかと思われる具体的な事実を紹介した記事がある。

そのひとつは、2017年12月5日に書かれた「トランプのホワイトハウスは『ディープステート』の敵に対抗するためにプライベートスパイの計画に傾く」という長い題名の記事だ。「Qアノン」の投稿が始まって約1カ月後に出た記事だ。

この記事によると、CIAやFBIなどの「ディープステート」と呼ばれる情報機関はトランプ政権に敵対しており、当時のポンペオCIA長官やトランプ大統領には、CIAからまともに情報が伝えられなくなったという。そのためポンペオCIA長官は、CIAの官僚機構には依存しない独自のスパイネットワークの構築を計画した。このネットワークは、ポンペオCIA長官とトランプ大統領にだけ直接情報を報告するものだった。

このネットワークの形成を行ったのは、3人の人物であった。中心になったのは、オリバー・ノース元中佐であった。ノースは、1980年代に大きなスャンダルとなった「イラン・コントラ事件」にかかわった中心人物である。

「イラン・コントラ事件」とは、レーガン政権が、レバノンでシーア派テロリスト集団に捕らえられているアメリカ人を解放するために、イランと裏取引をして、同国へ武器を売却した事件である。イランから支払われた代金は、ニカラグアの反共右派ゲリラ「コントラ」の援助に流用された。この事件は1986年に発覚するや、アメリカ国内のみならず世界を巻き込む政治的スキャンダルに発展した。

このとき、アメリカ、イラン、ニカラグアの3カ国を仲介したのが、オリバー・ノース元中佐だった。この人物がポンペオとトランプにだけ情報を報告するスパイネットワークの構築に動いた。

さらにオリバー・ノースには、CIAの軍事部門の元メンバーであり、民間の軍事会社、「ブラックウオーター社」を設立したエリック・プリンス、そしてプリンスの長年の同僚である元CIAのエージェント、ジョン・グワイアの2人が加わった。ちなみにエリック・プリンスの「ブラックウオーター社」は、アメリカが実質的に占領したアフガニスタンとイランに傭兵を派遣するために設立された民間軍事会社だ。ノースもプリンスもグワイアも、情報分野のベテランであり、さまざまな情報機関と太い人脈を持つ。

プリンスは、ポンペオCIA長官とトランプ大統領に直接報告するスパイネットワークを作るために、トランプ陣営の大口献金者に働きかけ、スパイネットワークを構築するための資金を調達した。トランプ政権は、この独自のネットワークの構築で、CIAへの依存度を減らすことができた。もしかしたら、このネットワークに先に書いた「NSA」の「Qグループ」もかかわっているのかもしれない。

Next: トランプ政権以後も残るのか?「Qアノン」の今後

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