コロプラの人気スマホ用ゲーム『白猫プロジェクト』を巡り、特許権の侵害があったとして、任天堂がゲームの差止めと損害賠償を求めていた裁判。これまで49億5,000万円としていた損害賠償額を、任天堂が96億9900万円に引き上げたとコロプラが発表し、大きな波紋を呼んでいる。
両社の間で取沙汰されているのは、『白猫プロジェクト』に実装されている「ぷにコン」と呼ばれるバーチャルパッドで、これに任天堂が有する技術が多く用いられているという。
損害賠償額を変更した理由は「訴訟の提起後の時間経過」だといい、4月13日付で任天堂から提出があったとのこと。損害賠償の96億9,900万円のほかに、遅延損害金も請求するという。ちなみにこの損害賠償額だが、今年2月にも44億円から49億5000万円への増額があったばかりで、その際も「訴訟の提起後の時間経過」が請求額引き上げの理由としていた。
ゲームファンの間で広がる「任天堂支持」
任天堂による大幅な請求額の引き上げに驚きの声があがった今回の件だが、ネット上の反応を見ると任天堂への好意的な意見が多く、コロプラに対しては批判の声が多数あがる状況。それらの声を総合すると、それが真実かどうかは定かではないが「任天堂がゲーム業界発展のために公開していた技術を、コロプラが利用して自社技術として特許申請した」という認識で共通しているようだ。
コロプラ裁判、まず任天堂はDS(iPhoneより3年も前に発売)でタッチパネルでのゲーム操作に関する特許を山ほど取っていて、スマホ含めタッチパネルを使うゲームはその特許を行使されると全滅するけど、任天堂としてはゲームを沢山作って欲しいので公開しているという前提があるのよ
— †┏┛ つる ┗┓† (@Sekkyonist) April 21, 2021
任天堂がコロプラにブチキレた件、あれは単なる特許侵害ではなく、任天堂が「業界の発展のために」と公開して使用料もとらなかった技術をコロプラが特許取得して使用料を要求しだしたという話だったと認識している。
— 寿甘(すあま) (@sweet_suama) April 21, 2021
任天堂さん、動画の収益化も十時キーも、画面タッチコントローラーも、基本方針として「ええよええよー、一緒に業界盛り上げてこ〜な〜」くらいの穏やかさなのに、その優しさに漬け込んで、自社製技術だと特許取ろうとしたコロプラくんを完全に“理解らせ”に入ってる。開眼した糸目京都キャラ。こわい
— ルルビイ (@ruruvi) April 21, 2021
そもそもゲーム業界における特許は、各社間の「仁義」によってバランスが保たれていたという指摘がある。ゲーム作りに関する様々な技術やアイデアを、各ゲーム会社がどんどんと特許出願していく流れがあるいっぽうで、仮に他社がそれを侵害した際には、自社も過去や未来に他社の特許を侵したかもしれない……という「お互い様」の価値観が共有されていたという。それゆえに、会社間の訴訟合戦の発生といったものが抑制され、各社による自由な開発が活発に行われていたのだ。
ただ、そういった「仁義」や「お互い様」といった価値観が、それこそアーケードゲーム全盛期といった古い時代からの企業間では培われたいっぽうで、2003年創業とゲーム業界では新興の部類に入るコロプラに、そのような価値観は皆無だったようだ。その最たる例として、ネット上で大いに取沙汰されているのが、コロプラがVR関係の特許を大量に取得し、その権利を主張していることで、VR業界の発展を阻害しているという話。ネット上では「特許ゴロ」「ゲーム業界の敵」といった厳しい言葉で、コロプラを非難する声もあがる。
任天堂と特許で揉めてるコロプラだけど、コロプラはみんなが「ご自由にどうぞ」としてるVRのいろんな技術を120件以上も特許申請したせいでVR業界の足を引っ張りまくってるのも忘れちゃいけない
— たまやん (@tamayan22) April 21, 2021
コロプラはVR関係の特許も取りまくってて厄介だから潰してほしい。他分野でも特許ゴロする気まんまんだし本当にゲーム業界の敵。
— Ritatti (@Ritatti1) April 21, 2021
コロプラがVR特許たくさん持ってるせいで日本のVR業界が発展しないって情報見たけど、
コナミが名前呼びシステムの特許取ったから他社乙女ゲームでいつまで経っても名前呼びシステムが出ないのを知ってるから
あながち嘘でもないんだろうなぁと思う….
— エミリ (@emtan) April 21, 2021
今の経営感覚なら、コロプラのそういった知財戦略も理解できるところで、特許などの問題に関して各社が鷹揚だったという話のほうが、むしろ前時代的なものだと断じられるのかもしれない。ただ、そういう風土がゲーム文化の発展に大いに繋がったとの見方は根強く、それによりこの件に関しては「任天堂支持」がゲームファンの間で広がる理由となっているようだ。
請求金額大幅引き上げで「狙いはコロプラ買収」との噂も
ところで、今回の「損害賠償額の大幅引き上げ」が公表された日だが、奇しくもコロプラが新作のスマホゲーム『ユージェネ』のサービス開始日だったという。この件を明らかにしたのは、任天堂からではなくコロプラ側からなのだが、なにもそんな日に公表しなくても……と、その狙いを図りかねるといった声も。ちなみに『ユージェネ』だが、事前登録者数は伸び悩んでいるという声もあがっている。
コロプラ新作ソシャゲー「ユージェネ」っていうゲームが今日サービス開始予定なんやけど、事前登録はほとんど達成しておらず、違う意味で気になっています()
現実をベースとしたオープンワールドで、ライブをして世界を救う旅が始まるそうです pic.twitter.com/1Lwrk1002B
— ℯ (@TS_suite) April 21, 2021
近年では、スクウェア・エニックスと共同開発した『ドラゴンクエストウォーク』が大ヒットとなったが、とはいえ『白猫プロジェクト』への依存度が依然高いとされるコロプラ。その人気タイトルにまつわる訴訟沙汰、しかも最強の法務部を擁する任天堂を相手に勝てる見込みは薄いとされ、そのうえ倍額に近い請求額の引き上げとあって、その株価のほうも22日は大幅な下落となっている。
コロプラの株価笑った pic.twitter.com/El8Q6t6SSX
— Satoshi Yoshida (@satoshiyoshida_) April 22, 2021
コロプラさんの株価
任天堂さんの訴訟問題と日経の下落で、時間外取引において更に下落中です。。
明日の朝はどうなるかはわからない。 pic.twitter.com/FGp6OrEljY
— すいちょくにゃん@白猫プロジェクト用 (@moudesou1234) April 21, 2021
任天堂との裁判が決着する以前に、早くもその影響が経営に影を落としつつある今の状況。ネット上では、任天堂の思惑として「コロプラに一定の打撃を与えた後に、買収するつもりなのでは」といった観測も流れており、先述のようにコロプラを「ゲーム業界の発展を阻害する存在」と目している層からは、それを歓迎する声さえも聞かれる。
買収も視野に入れてそうな金額だなぁ…。
任天堂、コロプラへの請求金額を49億5000万円から96億9900万円に大幅増額 https://t.co/Uz5tO5L314
— 欧場 豪(おうば ごう) (@overgo) April 22, 2021
任天堂vsコロプラのやつ、「強烈な一撃を加えて弱らせてから買収するつもりなのでは」とかの話、戦争っぽくて面白い
— なーはー (@78___) April 22, 2021
2016年に任天堂がコロプラに特許権侵害があると指摘して以来、約5年に渡って揉め続けている今回の件。コロプラ側も今回の件に関し、特許権侵害は一切なく正当性を主張していくとコメントするなど、退く気はまったく無いようで、争いはさらなる長期戦となっていきそうだ。
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