消費税の悪影響その1:経済成長が止まり景気が悪化する
さて、問題に戻るが、日本の名目GDP(経済規模)は2016年度に過去最大を更新したが、その前のピークはいつだったのだろうか?
答えは、(2)の1997年度だ。
1989年度の消費税導入で減速し始めた日本の名目GDPは、税率を5%に引き上げた1997年度に最初のピーク(533.4兆円)に達した。
しかし増税後にマイナス成長となったため、長期の低迷期、いわゆる失われた20年となる。
つまり、増税すると景気が悪化するのだ。これは財政引き締め(増税)が景気の過熱を抑える手段であることから不自然ではないのだが、景気減速期に行ったために、マイナス成長となった。
名目GDPの金額を更新したのは2016年度で、計算方法の見直しで30兆円を上乗せし、536.9兆円となった。しかし、その後の消費増税に加え、コロナ対策で経済活動を止めたために、2019年度の後期からは、また落ち込むことになったのだ。
上記の図2は日本の名目GDP(円建て)だ。青色の棒グラフが1980年度から2019年度までの名目GDPの推移。緑色の棒グラフは日本のGDPの最大の構成要素である個人消費額だ。名目GDPを円建てで見るのは、ドル建てにすると諸外国との比較は容易になるが、為替レートの影響を受ける。また、実質GDPを見ると、インフレ率の影響を受けるからだ。
この1980年度から2019年度までの名目GDPの推移に、1988年度以降の名目GDPの前年度比での成長率を赤色の棒グラフで重ねた。これで見ると、消費税が日本経済をいかに蝕んできたかがよく分かるのではないだろうか?
消費税の悪影響その2:導入したことで税収は減った
前頁の図1からは、1990年度が税収の最初のピークだったことが分かった。消費税は1989年度に導入されたので、増税による税収増効果はたった1年だったことになる。
その後に減収となるのは、増税が景気後退につながったからだ。つまり、消費税を新しく導入したために税収が減るという笑えない事態となったのだ。
事実、1988年度の税収は50.8兆円で、税収に消費税が加わった1989年度から2019年度までの31年間の平均税収は50.7兆円だ。
つまり、消費税5%が日本経済にもたらしたものは、マイナス成長だ。そして、その結果としての税収減なのだ(筆者注:図1に明記されている法人減税、所得税の累進税率の軽減も税収減に繋がった)。
想定される反論として、図2を見ると「消費税8%でもプラス成長が達成されている」という声もあるだろう。
だが経済政策は税制だけではない。この時期にはマイナス金利政策や、未曽有の量的緩和も行っている。ちなみに、1997年度から2019年度までに日銀の資金供給量は11.2倍になっている。経済規模は大きくならなかったので、当時経済規模の1割にも満たなかった資金供給量が遂に名目GDPを超えたのだ。
問題は、マイナス金利政策も経済規模を超える資金供給も、これ以上はできないというギリギリの金融緩和であることだ。これは今後に残されている金融政策は現状維持が精一杯で、事実上の引き締めも視野に入れなければならないことを意味している。
今後の金融政策では景気回復が期待できないどころか、景気がさらに悪化する懸念が大きいのだ。
この時期のプラス成長のもう1つの要因は、日本経済が世界経済に組み込まれていることだ。世界経済が成長すれば、その恩恵は日本経済にも及ぶことになる。とはいえ、1997年から2019年までに世界はドル建てで1.76倍に成長したが、日本はわずか15%増だった。