fbpx

消費税「ゼロ」こそ日本復活最後の切り札。なぜ立民「5%」案は無意味か?小学生でもわかる3つの根拠がこれだ=矢口新

消費税の悪影響その3:社会保障制度を崩壊の危機に落とした

消費税は少子高齢化社会における社会保障制度の補助財源として位置付けられている。1990年度の国が負担する社会保障関係費は11.6兆円だった。それが2018年度には33.0兆円になる。一方、税収は1990年度が60.1兆円、2018年度が60.4兆円で、これまで述べてきたように日本税収のダブルトップだ。

このことは、税収に占める社会保障関係支出が1990年度の19.3%から、2018年度は54.6%に急上昇したことを意味している。なんと、税収の半分以上を国が負担する社会保障費で持っていかれているのだ。しかも、それでも足りずに借金している。

前頁の図2の緑色の棒グラフが示しているのは、景気後退期でも個人消費は比較的に安定しているので、政府が目論むようにここに徴税することは安定財源になりやすいということだ。

しかし、それは大きな犠牲を伴う。個人ならば所得減、企業ならば減益のところに、安定額の税金を納めることは、飢饉の時にも容赦なく年貢を取り立てられることを意味する。こうした短絡的で自己中心的な政策は封建時代ならば百姓一揆にまで繋がりかねない「悪政」だ。ないところからは取れない。

実は、消費税による景気悪化は、社会保障費の増大にも繋がっている。不安定な雇用、所得減、社会保険料の増加が、可処分所得を減らすことで、更なる景気悪化に繋がったために、社会保障費が増大してきたのが、この30年間の歴史なのだ。このことは、社会保障費の財源にと消費増税をすれば、社会保障費はさらに不足し続けるので、どこまでも税率を上げられることを示唆している。

2019年度の時点で、日本の65歳以上の世帯の51.1%が公的年金収入だけで生活していたことをご存じだろうか?その手取り額は2000年度以降に導入された公的介護保険制度、所得税の配偶者特別控除の一部廃止、老年者控除の廃止、公的年金等控除額の縮小、定率減税の廃止、復興増税などで、大幅に減り続けている。

その結果、2019年度の高齢者世帯1世帯平均の年金収入は公的だけだと204.5万円で、仕送りや企業年金、個人年金などを合わせても223.2万円なのだ。

そこに、2020年12月には菅政権、自民公明両党が75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる対象を年収200万円以上にすることで合意した。200万円という金額は上記の事実を鑑みたものだろう。

一方で、2018年度の国民健康保険患者負担は1人当たり平均で5万9,290円だった。

つまり、全高齢者世帯の半分以上は公的年金204.5万円だけで生活しており、世帯内に患者が1人いれば残る生活費が198.6万円となり、2人いれば192.7万円しか残らないことなる。

さらにここから何パーセントかの消費税が事実上天引きされ、医療費窓口負担が2倍になるということだ。

社会保障関係費の国民の負担率は、1990年度には13.67%だった。それが2010年度には29.11%となった。2020年度までには30%を超えたことが確実だ。

このことは、我々が病気や怪我に見舞われたとき、失業したとき、老齢で働けなくなったときのために必要不可欠な社会保障の、その負担が重すぎて現在の生活が危機に至っていることを意味する。

例えれば、もしもの時に備えて入った保険の保険料が収入に比べて大きすぎて、生活を圧迫するだけでなく、借金まみれになったようなものなのだ。日本の社会保障制度の場合はさらに悲惨で、そこまでして払い続けた保険の保障が、もしもの場合にも、誰もが迎える老後にも、不十分な補償になりつつあることだ。とはいえ、社会保障制度を支えるのを止めれば、これまでの努力が無駄になってしまう。

この状況が、2020年以降のコロナ禍と、その対策でさらに悪化したことは疑いがない。

Next: 消費税率をゼロにすれば日本経済は復活できる

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー