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中国「自動運転タクシー」は実現目前、試験運行に挑む6社の事業化戦略。日本は追従できるか?=牧野武文

ロボタクシー配車とシェアリング自転車を組み合わせる滴滴(ディディ)

例えば、ライドシェア企業の滴滴(ディディ)は、上海市でロボタクシーのモニター乗客による試験運行を行なっています。滴滴によると、サービス提供都市を拡大していき、2030年までに100万台のロボタクシーを走らせる計画だと言います。

しかし、当然ながら、上海市のどこでも走れるわけではありません。上海市が許可した嘉定区の10km四方のエリアの中だけで、しかも大通りのみです。この地域は上海虹橋空港や上海国際サーキットがあるエリアで、道路は広く整備されていて、なおかつ交通量はさほど多くない地域です。

この自動運転可能エリアは徐々に広げられていく予定で、エリアとしては上海市全域に広がることはあっても、通行できる公道には一定の制限をかけざるを得ません。いわゆる「裏道を通り抜ける」というのは、自動運転技術にとってハードルが高いのです。いくら高性能のセンサーをつけ、人工知能が判断をしたとしても、ブラインドになっている路地から急に子どもが飛び出てきたら、止まることはできません。

つまり、ロボタクシーは、人間の熟練した運転手のように細い道を通って家の前まで乗りつけてくれるわけではなく、ある程度の広さのある幹線道路のみを走行するバスとタクシーの中間的な交通ツールにならざるを得ません。

滴滴がこの問題をどのように解消していくかは明らかになっていませんが、タクシー配車、ライドシェア、シェアリング自転車、ハイヤー、バスとさまざまな移動サービスを提供しているので、それらを組み合わせたMaaS(マース)サービスを構築していくと見るのが自然です。ロボタクシーはそのひとつのツールということになります。

滴滴はまだ具体的にどのようなサービスを提供するかはアナウンスしていませんが、多くの人が望んでいるのが「一鍵出行」「一鍵回家」サービスです。ワンタップで出かけられる、ワンタップで家に帰れるというサービスです。

例えば、市内のどこかにいて、地図アプリで「一鍵回家」ボタンをタップすると、自宅までのルート検索がされて、「地下鉄→ロボタクシー→シェアリング自転車→徒歩」などという乗り継ぎルートが表示され、同時に予約が入ります。地下鉄の駅を降りるとロボタクシーが待っている。ロボタクシーがシェアリング自転車ステーションに着くと、利用可能なシェアリング自転車が用意されているという具合です。

ルート検索した時に、必要な交通ツールが確保され、待ち時間なしで乗り換えて移動できるというのがポイントです。それであれば、何種類かの交通ツールを乗り換えしなければならなくても、高い利便性を提供することができます。

滴滴はそれだけのサービスを提供できるリソースを持っているので、月額定額制のような移動サブスクも可能になってきます。

このように、ロボタクシーを人間のタクシーのリプレイスではなく、利用シーンを限定したバスとタクシーの中間的存在と割り切ることができれば、環境が整った公道走行のみでも利用価値が生まれます。

また、技術開発が進めば、5G通信によるリモート監視や、安全監視員の乗務も不要になる可能性が見えてきます。

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