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中国「自動運転タクシー」は実現目前、試験運行に挑む6社の事業化戦略。日本は追従できるか?=牧野武文

百度が起こした事件が交通ルールを変えた

しかし、そこから新たな動きが生まれました。その年の12月には、北京市交通委員会が「北京市自動運転車両試験を促進するための指導意見」「北京市自動車両道路試験管理実施細則」の2つの文書を発表し、自動運転車が公道で試験走行できる環境を矢継ぎ早に整えていったのです。

こういうところが、中国に学ばなければならない点です。

問題が起きたから現行法に照らして処罰をして終わりではなく、このような問題が2度と起こらないように、現実に合わせてルールを整備したのです。それも半年足らずの期間でです(もちろん、北京市でもそれ以前から検討をしていたのだと思います)。

そして、自動運転車には性能試験を行い専用のナンバーを交付する。ナンバーの有効期間は30日間で、更新をするたびに専門委員会の認証が必要になる。免許を取得してから3年以上で、過去に飲酒運転などの処罰歴がない安全監視員を乗車させ、事故が起きた場合は自動運転中であっても、この乗務員の責任となる。補償額が500万元以上の自動車保険に加入しなければならない……などのルールが定められました。

「北京市自動運転車両道路試験報告(2020年)」(北京智能車聯産業イノベーションセンター)によると、自動運転車が試験走行可能な北京市内の公道は、249本、総延長895.48kmになっています。この他に、閉鎖された試験コースも用意されています。

百度はすでに57両の車両を使い、累計201万9,230kmの公道走行を行なっています。

北京市のこの動きに刺激をされ、他都市でも試験コースや公道試験走行の整備などを行い、どの都市が「世界で最初に自動運転車が走る街になるか」を競い合うようになりました。

試験コースでは、人工降雨、人工霧などの設備が用意され、試験走行が行われています。その結果を見ると、自動運転の技術はかなり成熟をしてきているようです。

百度のビジネス戦略は技術を販売するBtoB

百度のビジネス戦略は、技術開発をして、それを自動車メーカーに販売するBtoBです。

ロボタクシーでは、米国での試験ではクライスラーのパシフィカ、中国国内では第一汽車の紅旗EV、ミニロボバスでは金龍などのメーカーに技術提供をしています。アポロプラットフォームの参加企業と提携をして、車両の量産を始める予定です。

湖南省長沙市では、ロボタクシーの運行を行なっていますが、厳密には百度が直接運営をしているのではなく、百度、長沙市政府、地元企業が出資をして設立した湖南アポロ智行科技が運営を行なっています。百度としては運行データを取りたい、アポロのプレゼンテーションを行いたいという思いがあり、長沙市では自動運転を導入して都市交通問題を解決していきたいという思惑が一致をしたようです。テック志向が強い百度らしい戦略です。

Next: 各社がそれぞれの強みを活かして事業化へ。日本は追いつけるか?

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