fbpx

中国「自動運転タクシー」は実現目前、試験運行に挑む6社の事業化戦略。日本は追従できるか?=牧野武文

ビジネス化を目指す各社の戦略

現在、ロボタクシー事業を積極的に進めているのは、滴滴のほか、長年自動運転技術の開発を進めてきた百度があります。また、スタートアップ企業として、小馬智行(シャオマー、Pony.ai)、AutoX、文遠知行(ウェンユエン、WeRide)、元戎啓行(ユエンロン、DeepRoute)などがあります。

おもしろいのは、最初はどの企業もL4自動運転技術の開発を目指していたのに、それが実用段階まで成熟をしてくると、ビジネス化という課題に直面するようになり、それぞれに戦略が異なってきたことです。それぞれの企業が、それぞれに自動運転技術を活用したビジネス化を目指すようになっています。

中国の一般的な新しいビジネスでは、無数の企業が参入をしてきて、そこで競争が起こり、倒産した企業はより大きな企業に吸収されるという淘汰整理が行われ、最終的に2〜3社が市場を支配するようになるというパターンがよく見られます。

ところがロボタクシーの分野では、それぞれが棲み分けをしていくことになるかもしれません。

自動運転技術で先行する百度

そこで、滴滴は先ほど触れましたので、百度と先ほどご紹介した4社がどのようなビジネス化戦略を考えているのかをご紹介します。

この分野で圧倒的に歴史があるのが百度です。百度は検索広告事業でBATの一角を占めるほどに成長しましたが、2015年から自動運転の研究開発に着手をし、2017年4月に「アポロ計画」をスタートさせました。開発した自動運転技術をオープン化し、希望する企業に自由に使ってもらうという仕組みです。

これに、フォード、ダイムラーといった自動車関連企業、マイクロソフト、インテル、NVIDIAなどが参加表明をし、米グーグル傘下のウェイモーとともに、百度は自動運転の中心的プレイヤーになりました。

しかも、2017年7月の百度AI開発者会議で衝撃的な映像を公開し、中国の自動運転を大きく前進させたのです。

この映像は、百度が開発した自動運転車が、北京の第5環状線を、一般車両に混ざって公道走行しているというものでした。百度の李彦宏(リー・イエンホン、ロビン・リー)CEOが助手席に座り、自動運転している様子をレポートしています。この当時、自動運転車というのは閉鎖された試験コースを走るのがやっとで、一般車両に混ざって走行する姿に、出席者たちは熱狂しました。

違法だった自動運転

ところが、この会議を取材していた北京青年報の記者があることに気がつきました。車線変更禁止区間で車線変更を行なっているところが映像にあり、これは道交法違反ではないかというのです。

しかも、北京市では渋滞緩和と大気汚染軽減のために、自動車のナンバーの末尾により、第5環状線以内の地域への乗り入れが曜日により制限されています。問題の車は市内を走行できない日に走行していたのではないかという疑惑も指摘されました。

北京青年報の記者は、北京市の交通管理部門に問い合わせをしました。すると、管理部門ではすでに事態を把握していて調査に入っているというのです。さらに、現行法ではハンドルから手を離す自動運転そのものが違法にあたると指摘をしました。

百度では第5環状線などの公道で、試験走行を行なっていると発表しているが、それが事実だとすれば大きな問題で、関係部門と法解釈について協議を行っているという答えが返ってきました。どうやら、百度は管理部門の合意を取らずに、勝手に公道走行試験をしていたようなのです。

結果、交通管理局と百度の間で複数回の協議が行われ、百度側は車線変更違反と末尾制限違反を認めました。自動運転車はロビン・リーCEOの指揮下で走行をしていたため、ロビン・リー個人に反則金が課せられ、免許点数の減点が行われることで決着しました。

Next: 百度の事件がむしろ追い風に。試験走行の法整備を進めた中国政府

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー