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「やりたいことがない」人への処方箋。自分探しは無意味、天職はやってみないと見つからない=午堂登紀雄

必要なコンピテンシー(行動特性)は事前にはわからないこともある

また、事前に「こういう能力・スキルが必要だろう」と想像していたものと、実際にやってみて求められる能力には乖離があり、100%事前に想定することはできないという点も挙げられます。

たとえば私もコンサルファームに入る前は、経営コンサルタントに必要なのは論理的思考力だ、と思っていました。

もちろんそれは間違ってはいないのですが、それはコンサルタントに求められる能力の基本というか、ワンオブゼムに過ぎず、現実にはロジックを捨てなければならない場面が少なくないことがわかります。

たとえば課題解決の提案場面において、ロジックを積み重ねたところで「そりゃそうだよね」という何とも面白味のない結論になりがちです。ロジックとは筋道ですから、飛躍はあり得ないので当然といえば当然ですが。

そこで、いったんロジックを捨てて飛躍させる。「え!なにそれ!そんなのあり!?」というインパクトのある提案を、クライアントに提案することも必要なわけです(むろん、その提案の正当性はロジックで固めてある)。その道ウン十年のクライアント企業からは到底思いつくことのできないようなアイデアを出す、それがコンサルに数千万円ものフィーを払うからこその価値というものです。

そして、それはロジックだけでは生まれない。そしてその提案も、100%正確なものは不要です。

たとえば、可能性が89%でも90%でも「GO」という意思決定に変わりはないでしょう。一般的なプロジェクト期間は3か月とか6か月とかで、その限られた時間の中では100%を目指すより、80%やときには70%でも「それでイケるよね」という精度で提案するわけです。

しかし、「このプロジェクトではどの精度が求められるか」を見極めるのもなかなか難しい。これは経験やクライアントとの呼吸の中で感じ取る必要があります。

また、コンサルが提案したことを実際に実行するのは、クライアント企業の「人間」です。人間もやはりロジックだけでは動かない。むしろグウの音も出ないような論理的正しさが、かえって従業員の反発を招いたり、意固地にさせたりすることがあります。

それが、たとえば部門の再編・縮小・廃止といった、当該部門との利害衝突があるような提案の場合は顕著です。しかし現場が動かない提案など、ただのゴミでしかないでしょう。

そういう場合はロジックよりもむしろ、その部門の人たちの心に訴えかけるようなストーリーが必要です。むろん部門長へのヒアリングや事前の根回しもしますし、その部門長の性格次第では、コンサル側から酒席に招いて懐柔ということもやります。

こういう泥臭い行為を「邪道だ」「お酒に逃げるな」などと嫌う人もいるかもしれませんが、相手が頭の固い日本人なら、そして変革に必要ならそこまでやるのです(私の場合は、かもしれませんが)。

Next: 同じ仕事でも、役職が上がれば求められる能力も違ってくる

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