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「やりたいことがない」人への処方箋。自分探しは無意味、天職はやってみないと見つからない=午堂登紀雄

マネージャークラスに求められる「クライアントマネジメント」

そして、マネジャークラスになると「クライアントマネジメント」というコミュニケーション能力が求められます。

たとえばプロジェクトの途中途中で、進捗や内容について、クライアントはどれだけ満足しているか、あるいは何が不満なのかをミーティングなどで拾い上げながら、限られた時間の中でクライアントが納得する成果物・着地点へ導くことです。

これを適切にやっておかないと、「そんなの期待していたことじゃない!」などと紛糾したり、プロジェクトの終盤で「納得できない!」などとひっくり返されてやり直し、などといった最悪の事態になりかねません。

また、経営トップは叩き上げだけれど、そのプロジェクトを取り仕切るクライアント側のカウンターパートはMBA卒のロジカル人間ということも多く、コンサルに張り合ってくることもあります(むしろその方が質の高いプロジェクトになったりします)。すると、MBA卒の担当者とのコミュニケーションはロジカルに、中間報告や最終報告は経営トップにわかりやすいように、と使い分ける必要があったり。

さらには「本当に重要な問題は当初の〇〇ではなく、実は△△だった」というテーマの変更もありますし、クライアントのプロジェクト担当者が、途中で交代したとか想定外のケースもありますから、クライアントとの密なコミュニケーションは欠かせません。

そこから昇進していけば次は仕事を取ってくるセールスの能力が必要となるなど、つまり、論理的思考力は基礎体力みたいなもので、コミュニケーション能力に代表される高度な人間力が必要なのです。

しかし、それはコンサルの世界に実際に入ってみて実感することで、入る前はそこまでの理解は難しい。そして自分がどこまでやれるかも、やはりやってみないとわからない。

私自身、クライアントが「へえ!」と感心する提案はできたこともあり、できなかったこともあり、一方でクライアントの現場のおじさん社員を居酒屋で懐柔するのは得意(笑)、クライアントマネジメントは相性がいい人は問題ないのですが、そうではない場合は苦労した、そしてセールスの能力はないので、役員レベルへの昇進は難しいだろうなあと思います。

という感じで、あれこれ考えるよりもやはり飛び込んでみて、いろいろ経験することで自分がわかってくる、ということです。

求められるコンピテンシーは、時代によって変わっていく

たとえば書籍の編集者は、かつては大御所の先生に依頼し、本を作るまでで良かった。著名な人なら社内の決済を通りやすいし、ある程度売れ行きも読める。配本は取次に任せておけばいい。特に昭和の時代はそういう傾向があったように思います。

しかし平成に入り書籍の市場規模が縮小するようになってからは、「企画」の重要性が増し、「まだ見ぬ著者候補の発掘」が必要となり、タイトルや装丁デザイン・コピーを考え、販売方法まで工夫しなければならないなど、全方位への能力が求められるようになっています。

「どんな本が売れるか、いま求められているか」という世相を感じるセンス、著者候補を探し執筆を打診するという探索能力や人間的魅力、装丁の色や文字フォントまで考えるセンス、POPを作ったりウェブコラムへの掲載で告知しようなどのマーケティングセンスが必要となるなど、もはやスーパーマンでないと生き残っていけなくなっている。その変化に対応できない編集者は淘汰される時代になっているわけです。

それだけではなく、自分の会社が外資系に買収されるかもしれないし、部門ごと消滅するかもしれない。このような変化も事前には予測できないでしょう。

「こんなはずじゃなかった」ということは容易に起こりうるわけで、ゆえにあまり考えすぎず、まず飛び込んでみる。そして以前、当メルマガで「流されて生きる」と述べた通り、流されて適応していくのも混迷の時代を生き抜くひとつの方法ではないか、と私は考えています。

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