残り食材を写真でチェックできるスマート冷蔵庫
冷蔵庫も高級機が売れています。500l以上の大型冷蔵庫が全体の41%で、300l以下のパーソナル冷蔵庫は12%程度でしかありません。これも単身者はスマホがあれば冷蔵庫はいらない状況になっているからです。なぜなら、スマホがあればフードデリバリーを使って、飲み物でも食べ物でも注文できるので、自宅で食材を保存する必要はほとんどありません。
自炊をする場合でも、食材がキットになったセットが販売されているため、必要な時に購入し、調理をして食べればよく、単身者で冷蔵庫の必要性を感じる人はそうは多くありません(元々、キンキンに冷やした飲料は体に悪いとの理由で避ける習慣があることも影響していると思います)。
冷蔵庫の分野でもスマート冷蔵庫が好調です。京東と美的(ミデア)が共同開発した「京東スマート冷蔵庫」が話題になっています。
この冷蔵庫には2つのカメラが内蔵されています。ドアを開け閉めするたびに冷蔵庫内の写真が撮影され、それが画像解析により食材が識別され、食材リストを作ってくれます。認識率は現在のところ90%程度ですが、商品パッケージに入っている食材や形のある野菜はほぼ100%で、肉類や魚の切り身、残りものなど不定形の食材の認識が難しいのは仕方のないことです。
このリストと最新の写真はスマホアプリで見られるため、スーパーで買い物をするときに参考にできますし、そのままEC「京東」で注文することもできます。また、庫内食材リストのデータを解析し、冷蔵庫の中にある食材で作れるレシピの提案機能があり、足りない食材はEC「京東」で特別価格で注文できるというパーソナル優待の機能もあります。
ドアを開け閉めするたびに食材リストが作成されるので、ある食材が何日前に冷蔵庫に入れられたかもわかるため、賞味期限がきれそうになっている可能性がある食材を教えてくれる機能もあります。
スマホと連動するのはもはや当たり前で、スマホアプリから冷蔵庫内の食材リストが見られるだけでなく、温度などの確認、設定の変更などもできるようになっています。
ミニマルデザイン化された炊飯器
厨房家電の世界でも、スマホとの連動は当たり前のことになっています。その中で、日本の家電産業の考え方と中国の家電産業の考え方の違いがよくわかるのが、小米の炊飯器「米家」です。この炊飯器は日本でも発売されています。
日本の炊飯器と異なるのが、その外観です。米家の上面には「開始」という大きなボタンがひとつあり、小さな「予約」「取り消し」のボタンが添えられているだけです。つまり、ほとんど白い箱なのです。ボタンに触れると起動し、上面部分の下に埋め込まれたLEDが点灯し、大きな文字で現在時刻を表示します。炊飯中には残り時間などを表示し、電源を切ると、再び白い箱に戻ります。
つまり、余計なUI(ユーザーインタフェース)要素がないミニマルデザインになっているのです。今、中国でもリビングとキッチンの境がどんどん取り払われていっています。大きなリビングの端にキッチンカウンターが設置され、リビングとキッチンの区別がないようなマンションも増えています。キッチンを別室にすると、作る人と食べる人の分担が生まれてしまい、生活パターンにうまくマッチしないのです。
中国の夫婦の場合、共働きが多いので、食事を作るのは仕事が早く終わった方というのが一般的です。そのため、リビング、ダイニング、キッチンは繋がっている方が家族のコミュニケーションが取りやすいのです。
そのため、キッチン家電、キッチン用品のデザインレベルは急速に改善されています。リビングでくつろいでいる時にもキッチン用品が視野に入るため、冷蔵庫にしても電子レンジにしても炊飯器にしても、うるさくないシンプルなデザインが好まれるようになっています。
しかし、こんなボタン3つだけのUIで、ご飯をもちもちに炊き上げたいとか、お粥を炊きたいという場合はどうするのでしょうか。もう、みなさんおわかりだと思います。スマホアプリが用意されていて、アプリから細かい操作ができ、炊飯方法を炊飯器に転送できるようになっています。
これにより、お米だけでなく、参鶏湯のようなスープ系料理や温泉卵、牛肉煮込みといった料理も作ることができ、もはや炊飯器というよりもIH調理器具になっています。また、調理が終わると、スマホに通知が飛びます。
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