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冷蔵庫にカメラ機能は必須。中国家電「スマート化」に日本惨敗。健康・高級・ペットの3大トレンドで市場急成長=牧野武文

コロナ禍で整理された販売チャンネル

中国の家電が好調な理由のひとつが、販売チャンネルが非常にうまく整理できたことです。

家電製品でも、スマート家電、高級家電は商品を見比べていいものを買いたいと思いますが、一方で、商品にはあまりに強い関心はなく、動けばいいという買い方もあります。例えば、1年ほど仮住まいをするので冷蔵庫が必要とか、最初はどれがいいのかわからないので、低価格のものをとりあえず買ってみるという買い方です。

つまり、高級機などの高関心度の購入ではショールーム化された店舗に行き、低価格の標準品などの低関心度の購入ではECを使うという使い分けができあがっています。この棲み分けが明確になったのは、やはりコロナ禍でした。感染拡大が激しい頃、店舗はほぼ全滅状態でした。

外出規制が解除されても、人は混雑をする場所にはなかなか行こうとはしません。以前のような低価格家電を求めて大量の利用客が訪れ、そこに大量のスタッフが対応するという感染リスクの高い販売方法は立ち行かなくなったのです。そこで、量販店はECを強化し、店舗は少人数の顧客がゆっくりと商品を試用できるショールーム化を進めました。これにより、外食や旅行にお金を使わなくなった消費者が、自宅で快適にすごすために高級家電を購入するようになりました。

家電の販売チャンネルシェアを見ると、上位4社が70%を占めるという状態になっています。このうち、京東、天猫(Tmall)はECで、蘇寧易購と国美は量販店とECの複合型です。

都市部では、店舗に行き高級家電が売れる、地方ではECで標準家電が売れ普及をするという両輪で家電市場が成長しています。 ここで言う高級家電とは、スマート家電とほぼ同義語です。

では、どのようなスマート家電が売れているのか。カテゴリーごとに見てみます。

音声アシスト超薄型テレビが人気

最もスマート化が進んだのはテレビです。なぜなら、テレビはすでに商品としては寿命を迎えていて、テレビ放送受像機ではなく、室内大型ディスプレイとしての需要が強くなっているからです。

社会主義国である中国にとって、ラジオとテレビは国家プロパガンダとして重要なツールであるため、さまざまな促進政策が行われ、テレビ局は各地にありますし、テレビの普及率も100世帯あたり120.6台と高くなっています。しかし、テレビがお茶の間の主役にはなり得ていません。

地上波もありますが、都市ではあまり利用されていません。中国の都市は早い段階から、4階建てから6階建て程度の集合住宅が基本となっていったため、アンテナを立ててもなかなかうまく受信できないのです。そこで都市部ではケーブルテレビが発展をしました。また、農村では衛星放送が発達をしました。いわゆる八木アンテナを立てて、地上波を受信している家は、都市郊外と農村の一軒家の多い地域ぐらいです。

ケーブルや衛星放送の特徴は、チャンネル数が多いということです。数十チャンネルあるのが普通で、そのため、中国の昔のテレビのチャンネルは、ラジオのチューニングやボリュームつまみのような形式になっているものがほとんどでした。多チャンネルが当たり前であったため、現在のストリーミングに近く、デジタルテレビへの移行もスムースでした。

ほぼすべてのテレビ局がネットでサイマル放送(同時放送)を行なっていて、アーカイブ視聴も可能になっています。ネットフリックスのようなストリーミングサービスも早くからサービスを提供しています。そのため、若い単身者はあまりテレビを持っていません。一人暮らしであれば、スマホがあればじゅうぶんだからです。

EC「京東」の売行きとユーザー評価を元にしたランキングに登場する顔ぶれを見ると、冷蔵庫、洗濯機、エアコンといった商品ではいわゆる家電メーカーが並びます。しかし、テレビとなると、シャオミ、ファーウェイ、オナー、オッポといったスマホメーカーが登場しています。

つまり、テレビは、テレビ受像機という伝統的な商品形態はすでに終わっていて、大画面タブレットに近い商品になっているのです。サイズは55インチが売れ筋で、次に43インチとなります。また65インチから85インチの大型テレビも前年比60%以上の伸びとなり、伸びている分野です。30インチより小さいパーソナルテレビはほぼ売れなくなっています。スマホかタブレットを使えばいいからです。

スマホメーカーがテレビ販売台数のトップに

その中で2019年にテレビ販売台数でトップに立ったのが、小米(シャオミ)です。この成功を見て、ファーウェイやオッポもテレビに力を入れるようになりました。

シャオミのテレビの特徴は、スマホの製造技術を活かして、超薄型に成功したことでした。すでに2018年の「小米電視4」の段階で、厚さ11.4mmを実現し、購入者が自分で壁掛け工事ができるようになりました。それまでのテレビは、業者に工事を依頼する必要がありました。また、小米では、DIYが苦手な人向けに壁掛け設置工事も提供していますが、フックを埋めて配線するというだけの簡単な工事なので、わずか190元(約3200円)の追加料金で壁掛け工事をしてもらえます。

最も人気になっているのは音声アシスタント機能です。小米では「小愛同学」という音声アシスタントを開発していて、スマートフォンを始めとする小米製品に搭載しています。テレビにもこの音声アシスタントが搭載されています。

「テレビをつけて」「テレビを消して」という基本動作が音声できるだけでなく、「朝7時にテレビをつけて」「タイマーを30分にセット」「30秒早送りして」「5分巻き戻して」「32分12秒までスキップ」という細かい操作も音声でできるようになっています。

また、専用リモコンはAppleTVやFireTVのリモコンと同じように数字ボタンはありません。では、どうやって番組を選択するのか。番組表はありますが、前面には出てきません。パッチウォールというインタフェース画面があり、パネル状におすすめの番組が表示されます。今、ストリーミングされているもの、アーカイブに入っているものなどから、過去の視聴傾向を分析してリコメンドされる番組が5つから7つ程度並びます。基本はこの中から選ぶだけです。それ以外のものを見るのであれば、検索をして探します。

このように地上波、テレビ番組表が中心になるのではなく、コンテンツが中心となって見るものを選んでいくというのはすでにAndroidのスマートテレビでも当たり前の考え方になっています。

小米のテレビは、やはり音声アシスタントが秀逸で、リモコンは番組を選ぶ時に使うだけで、視聴中は音声だけでじゅうぶんに操作ができます。

地上波という一斉放送をリアルタイムで視聴するというスタイルが時代に合わなくなり、テレビという商品は成長空間がほとんどなくなっていますが、それでも成長しているのは、スマートテレビ=大型スマートディスプレイという新たな形を見つけることができたからです。今後は、スマホとの連携も強化され、より情報表示ディスプレイとしての機能が強化されていくと見られています。

Next: 冷蔵庫にカメラ機能は必須!日本と中国では考え方がまったく違う

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