与党がまとめた2022年度税制改正大綱では、「住宅ローン減税」「賃上げ促進税制」「オープンイノベーション促進税制」と3つのポイントがある。個別に見ていくと、どれもが財務省の「話をよく聞く」岸田政権の色が濃く出ており、結論を出さずに先送りするのが特徴かと思えてくる。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2021年12月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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「財務省の」話をよく聞く岸田内閣
自民・公明両党は12月10日、2022年度の与党税制改正大綱を決定した。
結論から言うと、岸田内閣が何を優先して政策として実行したいのかわからない、色の無い内容だと思う。
否、色の無いと申し上げたが、賛否両論がある重要な政策の決定を先送りしたという点と、財務省の歳出を削減したいという意向によって成長戦略に関わる税制がインパクト不足なものになっている点については、「決定できない岸田総理」「財務省の影響力が強い岸田内閣」の色が強く反映されているとも言えるかもしれない。
少なくとも筆者は、今回の税制改正大綱の内容から、岸田総理が掲げている「成長と分配の好循環」の布石になるとは感じられなかった。
全体的に規模的にも中途半端な印象で、そのためインパクトに欠けている。
実際の影響度よりも、「やっている感」を醸し出すことに重点を置いているのではないかとさえ疑いたくなるほどである。
以下、3つの個別の重要な改正のポイントである「住宅ローン減税」「賃上げ促進税制」「オープンイノベーション促進税制」について記載していく。
住宅ローン減税:改善・改悪が混じる
住宅ローン減税については、今回の税制改正の目玉の1つとされている。
今回の改正では2021年末までの入居が対象だったものが、2025年末まで4年間延長された。内容については、改善と改悪が混在している。
減税期間は、これまで新築が原則10年、中古が原則10年であったが、新築は原則13年に拡大される(中古はそのまま原則10年)。
一方、控除率は年末の住宅ローン残高の1%から0.7%に縮小される。
控除率の縮小については1%のままだと住宅購入者の減税額が支払う利息よりも大きくなる「逆ざや」が発生することを、以前から会計検査院が指摘していたという背景がある。
国交省の試算では、0.7%に是正すれば、逆ザヤは解消されるということである。
超低金利ゆえの現象であるが、個人的には住宅ローンの利息の支払いよりも控除額が大きくなることについて、特段大きな問題があるとは思わない。
ご存じのとおり、住宅は一生の中で一番大きな買い物だし、住宅を購入した人は、付帯する家具などの購入もするため、住宅購入が増加することは経済への波及効果が大きい。
それなのに利息よりも控除額が大きくなるからというような小さな理由で、インパクトを小さくして経済への波及効果まで小さくしてしまっているのは愚策でしかない。
むしろ控除額が利息の倍になろうが、住宅購入意欲を促すような大胆な税制が必要だと思う。
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