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ウクライナ侵攻がこじ開けた「ビットコイン覇権」への道。ロシア制裁を追い風に価格上昇も=高島康司

ウクライナとビットコイン

そのような状況になっているのも、ウクライナとビットコインの独自な関係があるからだ。

実はウクライナでは、すでに不換紙幣よりも暗号通貨の方が多く取引されているのだ。ウクライナでは、ビットコインのような暗号通貨を合法化する法案を可決し、デジタル資産の規制と管理のための枠組みを準備した。

ウクライナ政府は本気で仮想通貨に賭けていた。この国にはすでに「デジタル転換省」というのがあり、暗号通貨関連企業に対する税制上の優遇策もある。同省副大臣のアレクス・ボルニャコフは、「わが国には才能ある技術者と、ブロックチェーンを生成する企業のコミュニティーがある」と豪語していた。

公式統計によれば、ウクライナには今でも100前後の仮想通貨関連企業がある。サイバーセキュリティー企業の「ハッケン」や投資団体のまとめた報告によれば、2019年7月からの1年間にウクライナから送金された暗号通貨の価値は米ドル換算で82億ドル、入金額は80億ドル相当にも上った。

また、ウクライナの南東部、ロシアからも近いザポリージャ原子力発電所のすぐ隣で、ビットコインのマイニングのためのデータセンターが建設されている。「ザポリージャ原発」の規模は欧州最大だ。

そこを運営する国営企業、「エネルゴアトム」と民間企業の「H2」が約7億ドルの資金を投じて、同原発の電力を無尽蔵に消費する施設を作っているのだ。マイニングには膨大な電力が必要なので、これを原発でまかなう計画だ。

さらに西部の「リウネ原発」付近にも、マイニング施設の建設計画がある。こちらは「エネルゴアトム」に加え、オランダの企業などが出資している。

ビットコイン相場も乱高下か

このように、あまり知られていないが、ウクライナはビットコインなどの暗号通貨の世界的なハブになることを目指している国なのだ。

エルサルバドルのようにビットコインを法定通貨にするわけではないものの、あらゆる決済にすでにビットコインが使われている。今後は原発が発電した電力を使い、世界的なマイニングセンターになる計画だった。

また、「ニューヨークタイムズ」によると、ウクライナでは、1日あたり暗号通貨で処理されるトランザクションの数が、不換通貨である同国の通貨、フリヴナで処理されるトランザクションの数を上回っている。さらに、ウクライナにはすでに、ブロックチェーン技術への進出を熱望する開発者の深い人材層が存在する。オランダのIT企業、「Daxx」は、2021年のITのアウトソーシングの魅力でウクライナを世界1位に、プログラマーの雇用でも1位に位置づけた。

そのようなウクライナがロシア軍に侵攻されたのだ。

今後、戦争が長引き国が破壊されると、こうした暗号通貨関連の野心的な計画はすべて水泡に帰す。これを懸念してビットコインの相場の下落圧力が高まっているようだ。

Next: ウクライナでビットコイン寄付が急増。ルーブル紙切れ化でロシアも…

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