投資家の評価はいまいちだったポップマートの快進撃
実際、店舗の経営は最初から苦しかったようです。店員の給料の遅配もたびたび起こり、王寧は「中国のディズニーになる」と言って、投資家を探しましたが、どの投資家も断ります。「人形と玩具、雑貨を売っている店であって、大きく損をすることはなくても、大きく儲けることもない」。それが投資家の評価でした。投資家は、投資した資金が100倍、200倍に膨らむことに夢を見ているのですから、ポップマートはつまらない案件にしか見えないのです。
2012年8月になって、ようやく投資家が見つかります。投資会社「創業工場」が200万元(約3,700万円)を投資しました。これがなければ、ポップマートは倒産をしていたはずです。なぜなら、その後、ポップマートは3年連続で赤字となり、そのたびに創業工場は救済のための追加投資を行うことになるからです。損切りができず、深みにはまっていったと言うこともできます。
しかし、2016年になって、ようやくヒット商品が現れます。シリーズフィギュア「ソニーエンジェル」です。ソニーエンジェルはブラインドボックス(箱を開けるまでどれが入っているかわからない)というものでしたが、アソート(全部入りセット)を販売し、さらにレアな確率でしかアソートにも入らないシークレットフィギュアがあるという販売スタイルです。
王寧は、ソニーエンジェルの愛らしくポップなデザインも気に入り、ブラインドボックスという販売方法も面白いと感じました。
そこで、ソニーエンジェルの派生商品を製造して販売したいと考えますが、もちろん、勝手にそんなことをするわけにはいきません。そこで、自分でクリエイターを探し、Mollyというシリーズフィギュアを販売します。これが爆発的なヒットとなりました。2017年に発売をして、2018年には5.21倍、2019年には2.13倍に売上が増えました。
ポップマートは、このブラインドボックスシリーズを増やしていき、12のオリジナルIP、25の独占IPを持ち、さらに他社のIPを56種類扱っています。オリジナルIPは版権をポップマートが保有しているのでどのような派生商品でも販売することができます。独占IPはクリエイターとの契約によるもので、派生商品についてはクリエイターと話し合いをする必要があります。他社IPは、ミッキーマウスやハローキティなどで版権契約を結んでいるだけなので、基本的に派生商品を開発することはできません。
このオリジナルIP、独占IPの多さがポップマートの強みになっています。ポップマートは多くのクリエイターを抱え、企画から発売まで8ヶ月から10ヶ月で可能になる体制が整っています。
また、店舗は33都市136店にまで拡大をしています。さらに、ブラインドボックスの自動販売機も展開していて、62都市1,001台に達しています。
ポップマートにしても52TOYSにしても、その成長に日本が大きく関わっていることに注意してください。ポップマートも最初はソニーエンジェルの真似でしたし、52TOYSもバンダイから多くのことを学びました。
これから収蔵玩具、大人玩具の市場が成長し、いまだに日本のアニメ番組が強い影響力を持っていることを考えると、日本のメーカーや販売業者が活躍する余地は多分にあるのではないかと思います。有望な成長市場であることは確かです。
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『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』(2021年3月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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