中国で急速に拡大する「大人玩具」市場
このような「大人玩具」の市場は日本ではすでに成熟をしています。非常に高い品質のフィギュアが販売され、とても子どもが買う価格ではありません。それだけでなく、鉄道模型やモデルガンなどたくさんの大人玩具があります。デジタル製品なども大人玩具の一種かもしれません。
しかし、中国ではこの大人玩具の市場がありませんでした。その代わりに、古玩(グーワン)と呼ばれる骨董品が広く人気になっていました。北京市には潘家園(パンジャーユエン)という場所に有名な骨董市場があります。古いものであればなんでもありですが、昔の町名表示のプレートや軍隊の階級章、昔の絵本などなんでも売っています。その中で自分で好きなものを買い集めるのが楽しみになっています。
大人はこのような骨董、お金に余裕があれば美術品や宝飾品をコレクションするのが当たり前で、玩具をコレクションするなどというのはあり得ないことでした。
このような大人たちが玩具に注目するようになったのは、明らかに日本のアニメの影響です。80后(80年代生まれ)は、80年代に徐々に入り始めた日本のアニメを熱心に見ました。「聖闘士星矢」「ドラゴンボール」「らんま1/2」「スラムダンク」が人気となりました。さらに、中学生から高校生ぐらいの時にパソコンが使えるようになり、大学生になるとインターネットと、デジタル環境も整っていきます。
この80后も現在は40歳近い大人です。子ども時代とは違って、多少のお金の余裕もあります。彼らは骨董や美術品のコレクションにはいかずに、子どもの頃見たアニメに近いグッズを集め始めます。
また、90后、95后のZ世代と呼ばれる若い世代も骨董や美術品ではなく、玩具に行きました。Z世代はインドアの活動を好むため、自室をさまざまなもので飾ります。自分の好きなものに囲まれて暮らすのが最上だと考えられています。UFOキャッチャーで獲得したキャラクターを飾ったり、スニーカーを飾ったりする人もいます。ここにブラインドボックスのフィギュアがうまくハマりました。
今、中国では骨董や美術品から大人玩具への大きな変化が起きています。
都市部の若い女性がターゲット
収蔵玩具は、生活必需品ではありません。完全な趣味の商品です。このような不要不急の商品の消費額は、1人あたりのGDPときれいに比例することがわかります。つまり、中国はこれから収蔵玩具市場が成長していく可能性が高く、現在の盲盒はまだその入口にすぎないと考えることができます。
そのため、コンサルティング会社フロスト・サリバンが出している中国潮流玩具市場の予測では、2019年までの実績が成長率34.6%であったことから、2020年以降も29.8%の成長をするという予測を出しています。
盲盒を買うのは18歳から29歳までの都市住人の女性が中心です。盲盒の対象消費者のペルソナとしてよく言われるのが、以下になります。
・25歳、上海在住、独身、女性
・収入は8,000元(約14.8万円)。そのうち2,000元を自分の好きなものを買うことに使う
・よく利用するプラットフォームは、ウェイボー、抖音、ビリビリ、小紅書、知乎
・よく見る情報は、流行、化粧、生活
・休日に友人と街をぶらぶらして店舗に立ち寄り、新製品が出ていると購入
・ネットでの評判を疑わずに素直に受け入れる
・人気の化粧品や食品を購入すると、SNSで友人に見せることが多い
・口紅を使い切ったことがない(新しい商品への興味が強い)
収蔵玩具のブランド認知度の調査では、子どもの頃から遊んでいるレゴが最も高くなりました。ポップマートは女性の認知度が高く、日本のバンダイの認知度は男性の方が高くなっています。また、52TOYSも次第に認知度が上がってきています。
収蔵玩具の市場をリードしているのは、ポップマートと52TOYSの2社であることは間違いありません。
この収蔵玩具市場が稀有なのは、ポップマートが上場に成功するという成長市場でありながら、テック企業の参入がほとんどないことです。IP小站にテンセントが投資をしているぐらいです。テック企業が投資会社を通じて間接投資をしている例はあるかもしれませんが、大手テック企業が収蔵玩具市場に直接参入するということが起きていません。
ご存知の通り、新たな成長市場が登場すると、テック企業が参入をして、その資本力を背景にクーポンを乱発し、激しい競争が起きるというのが中国のいつものことですが、それが起きてなく、プレイヤーがいずれも独立系なのです。