中国が台湾へ軍事侵攻する可能性
ちなみに今回のウクライナ危機で、以下の理由により、中国が台湾への軍事侵攻する可能性はかなり低くなったと考えている。
理由その1. 士気が高くない軍隊が、自国を防衛しようという士気が高い国を攻めることの難しさが、ウクライナ危機で顕在化した。台湾併合は習近平主席にとっては悲願かもしれないが、中国人民解放軍が高い士気を持って台湾を責められるかといえば、疑問符が付く。
理由その2. ウクライナ危機によって、軍事侵攻した際の経済制裁(特にSWIFT排除による金融制裁)の威力を見てしまった。ドル決済への依存度がロシアよりもずっと大きい中国が、SWIFT排除の制裁を受けたら経済が壊滅的なダメージを負う。もちろん制裁した側の西側諸国もダメージを負うので、中国をSWIFTから排除することは容易ではないという意見もあるが、さすがに台湾に軍事侵攻した時は実行する可能性はある。そこまでいかなくても「SWIFT排除までやってくるかもしれない」ということが抑止力に繋がる。
ウクライナ危機でロシア経済がダメージを受け、ロシアと中国の関係が深まることによって、中国が漁夫の利を得るという見方もあったが、現状では中国にはメリットよりもデメリットが多いように思う。
投資マネーが地政学的リスクの意識を強めてしまったというのが、中国にとっては一番のデメリットだろうと思う。
中国経済の行方はどうなる?
中国経済の足元の状況はどうだろうか?
直近の四半期である2021年10~12月期の、中国国家統計局が発表しているGDP成長率は前年同期比4.0%である(2021年通年では8.1%の経済成長率)。
また中国政府は2022年3月5日に、2022年の経済成長率の目標を5.5%に設定している。
そもそも中国国家統計局の発表する数字は信頼性が極めて低く(むしろ全く信用できない数値であると言ってもよいぐらいだと考えている)、そのまま真に受けてはいけないと考えるのは、以前からこのメルマガで述べているとおりである。
中国の成長をけん引してきた不動産セクターが厳しくなっているのは報じられている通りだが、銀行も不動産業向け融資を減らしている。
2021年末時点で、香港に上場している中国の銀行30行のうち17行が、2020年末に比べて不動産業向け融資残高を減らしたと報じられている。