制度が改められても「返礼品競争」はなくなっていない
結局、2019年6月から国は、「返礼品の調達額は寄付額の3割以下」「返礼品は地場産品」などと制度を改め、泉佐野市や他の4つの自治体をふるさと納税制度の指定対象から外したため、泉佐野市に訴えられます。
泉佐野市は最高裁まで争った結果、制度改正以前の高額返礼品の問題行為については、お咎めなしとされ、ふるさと納税への復帰も認められました。
そして、他にも43の自治体が要注意先として、総務省から制度の指定対象期間を当面、絞られているのです。
誰がこんな制度を導入したのか?
ふるさと納税制度は「税金の無駄遣い」ですが、いったい誰がこんな制度を考えたのでしょう。
そもそものキッカケは、2006年3月の「地方を見直す『地方税制』案」と題された日経新聞のコラムといわれます。
これを見た地方出身の政治家たちの間で議論が進み、第1次安倍内閣の「地方創生プラン」として、2008年からスタートしたのです。
地方の自治体は、人口減少でどこも財政状況が厳しくなっています。
地方で保育や教育のサービスを受けた子どもたちも、成人すると都会に出て働き、一番稼ぎのある期間は、都会で納税し、老いて収入がなくなる頃に故郷に戻ります。
そして地方自治体は、医療費負担や介護負担などの福祉費用がのしかかるだけなのです。
この仕組みを少しでも是正する制度が構築できないか――というのが、ふるさと納税の設計趣旨だったのですが、返礼品競争が起こることまで事前に予想できなかったのです。
導入したのは第1次安倍内閣で総務大臣を務めた菅義偉氏であり、のちに首相になっています。
この人は、横浜市議時代と総務大臣在任中に、自分の実弟や長男を許認可権限のある関連企業に就職斡旋するという非常に問題のあることを、平然と行った厚顔の政治家といってもよい人でしょう。