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ロシア核攻撃の標的となる日本、戦争する覚悟はあるか?米国主導の経済制裁に加担する愚かさ=矢口新

ロシアへの憎悪を掻き立てるメディア

林芳正外相は4月19日の記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻を背景に在日ロシア人へのヘイトスピーチや嫌がらせが起きている現状を踏まえ、人権侵害の深刻化への懸念を示した。「ロシア人であるという理由だけで排斥したり、誹謗中傷したりしないよう改めて呼びかけたい」と訴えた。

出典:林外相、人権侵害を懸念 ロシア人へのヘイト巡り – 日本経済新聞(2022年4月19日配信)

とはいえ、我々が目にする報道は連日のようにロシアに対する憎悪をかき立てており、政府の政策もロシアを敵視している。以下は日本国内の報道からピックアップした。

1. 外務省は8日、日本に駐在するロシアの外交官ら8人を国外追放すると発表した。ロシアによるウクライナ侵攻で大量の民間人が虐殺された事態に対応した。
※出典:ロシア外交官ら8人追放へ 外務省、民間人虐殺に抗議 – 日本経済新聞(2022年4月8日配信)

2. 政府は12日、ロシアへの追加経済制裁でロシア最大手銀行のズベルバンクなど2行に対し、外国為替法に基づく資産凍結措置の導入を閣議了解した。資産凍結措置を導入している銀行はロシア第2位のVTB銀行など7行から9行に拡大する。また、ロシアに対する新規投資を5月12日以降禁止することも正式に決めた。
※出典:ロシアの銀行最大手ズベルバンクなど資産凍結 政府、正式決定 – 産経ニュース(2022年4月8日配信)

3. 政府は12日、ロシアへの追加経済制裁として、プーチン大統領の娘2人を含む398人を資産凍結の対象に加えたと発表した。既に同様の措置を発表している米英や欧州連合と足並みをそろえた。また、ロシアからの一部物品の輸入を19日から禁止する。
※出典:プーチン氏娘の資産凍結 ロシア産ウオッカ、19日から禁輸 – 時事ドットコム(2022年4月12日配信)

4. 松野博一官房長官は19日午後の会見で、ウクライナに自衛隊のドローンを提供することにしたが、通常は情報収集などに用いられ、防衛装備品には該当しないとの見解を示した。その上でウクライナが目的外使用しないことを確認していると説明した。
※出典:ウクライナにドローン供与、情報収集目的で=松野官房長官 – ロイター(2022年4月19日配信)

5. ロシアに対する貿易上の優遇措置「最恵国待遇」を撤回するための改正関税暫定措置法が20日、参院本会議で可決、成立した。ウクライナ侵攻に伴う経済制裁強化の一環で、ロシア産魚介類などの関税が来年3月末まで引き上げられる。
※出典:ロシア最恵国待遇撤回法が成立 制裁強化、魚介類関税引き上げ – 河北新報(2022年4月20日配信)

6. 共同通信社が4月16、17両日に実施した全国電話世論調査では、ロシアへの経済制裁は、日本経済や暮らしに影響が広がったとしても「続けるべきだ」との回答が73.7%だったという。「続ける必要はない」が22.1%だった。
※参考:内閣支持率58.7% 共同通信世論調査 – 日本経済新聞(2022年4月17日配信)

日本政府はロシアに対して敵対行動を取っている

このように、日本政府はロシアに対して敵対行動をとっている。1つずつ見てみよう。

(1)の外交官追放は、日本や日本人が攻撃されたわけでもないのに、あからさまな敵対行動に出たことを意味する。

(2)は、ロシア帰属の資産凍結措置ということで、正当な理由がなければ米国主導の略奪行為に加わることに等しい。ウクライナへの攻撃が、日本が制裁に加わる正当な理由となるのかは後述する。

ちなみに、ロシアがドル建て国債2本に関する支払いを契約に反してルーブルで行ったことについて、国際間のクレジットデリバティブ決定委員会は「潜在的な支払い不履行が発生した」との判断を示している。
しかし、ロシアはドル資産を差し押さえられており、ドル送金もできず、制裁によって債務不履行が不可避な状態に置かれている。

(3)の資産凍結拡大は、そうした略奪行為を民間人にまで広げることだ。これは、正当な理由があったとしても、ロシアからの報復を覚悟しなければならない。

例えば、日米欧の航空機リース各社が、ロシアの航空会社に貸し出した機体が返ってこない事態になっている。ウクライナ侵攻に対する欧米の経済制裁への報復措置として、ロシアが、外国から借りた旅客機約400機を持ち出せなくしているためだ。

つまり、政府主導のロシア資産の差し押さえという敵対行動の報復として、日米欧の民間資産が差し押さえられているのだ。

(4)の防衛装備品には該当しないとは、戦地での情報収集が戦争行為とは別だとする詭弁だ。ウクライナが自爆ドローンなど「目的外使用」に使わなくても、ドローンは戦地での「情報収集」という目的に役立ち、ロシア兵殺傷につながっているからだ。

(5)の経済制裁強化は、(3)のロシアからの一部輸入禁止に加え、モノ不足や物価上昇の要因となる。フランスでは電気代が2年で2倍になったという。ロシアからの天然ガスの輸入コストを下げるためにドイツなどが設置したノルドストリーム2が、完成と同時に廃業に追い込まれたことも要因の1つだ。

しかし場合によっては、日本はさらに深刻だ。ユーロ圏全体の電源構成は化石燃料が4割強だが、日本は8割にも達するからだ。日本はロシアとの共同事業「サハリン」から撤退することで、停電を防ぐため「天然ガスを買い負けるな!」という声があるが、これは安いロシア産ではなく、事実上、高い米国産を買うことを意味している。

(6)のように日本経済や暮らしに影響が広がったとしても経済制裁に賛成するが圧倒的なのは、メディアの報道が、ロシアに対する憎悪をかき立てているためだとしか思えない。ロシアへの敵対的な制裁は日本には何のメリットもなく、日本人の生活を直撃し、核攻撃を受けるリスクを高めるからだ。

Next: 「許せない」の違和感。西側諸国のプロパガンダにのせられる日本

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