安倍晋三元総理が奈良で狙撃されてから数日が経ちました。世界に影響力を持った政治家安倍元総理を失ったことで、内外の政治バランスが変わることは避けられません。自民党内の勢力図も変わり、金融政策でも「アベクロ緩和」の修正が行われる可能性が出てきました。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年7月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
安倍元総理銃殺に様々な憶測
安倍晋三元総理が奈良で狙撃されてから数日が経ちましたが、依然として解明されない点もいくつかあります。
病院側は8日の段階で喉に2か所の銃創があり、1つは心臓を傷つけたと説明しましたが、警察の説明では左上腕部が撃たれ、左右の鎖骨下動脈を損傷したことが致命傷、と言い、説明が異なります。
容疑者は背後から2回撃ったとテレビでも紹介され、1発目は外れ、安倍氏は2発目発射の後に倒れたと言いますが、テレビ朝日の写真資料では安倍元総理の横を飛ぶ銃弾のようなものが2つ映っていると言います。発射時に煙がもうもうと立つほど、劣悪な火薬で殺傷力があったのか。容疑者の銃の弾丸と弾倉は一致するのか、そもそも弾丸は見つかったのか、まだ情報はありません。
容疑者が放った銃弾は実は当たっていなくて、別の銃弾が安倍氏を襲った可能性もまだ否定できません。ケネディ暗殺、伊藤博文暗殺も、オズワルド、安重根とは別に真犯人がいたとの説が今でもあります。
今回の事件も政治色が強いだけに、真相が明かされるのかどうかわかりませんが、民主国家日本の警察の実力発揮が期待されます。
その真相はともかく、世界に影響力を持った政治家安倍元総理を失ったことで、内外の政治バランスが変わることは避けられません。
トランプ派への打撃
まずは次の大統領選に出馬意欲を見せるトランプ前大統領と、その仲間たちへの影響です。
白人至上主義のトランプ氏は専制君主のようにふるまい、一部には「ネオナチ」とも称されています。このトランプ氏と親しく、仲間として活動していたのがロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席で、日本の安倍元総理や北朝鮮の金正恩総書記もその仲間とされています。
安倍総理と習近平主席は一時日中関係が悪化していた際には会っても目も合わさない劣悪な関係にありましたが、トランプ氏を通じて仲間として振舞っていました。今回の事件後も、習近平主席から真っ先に弔意が届いています。
このトランプ・チームについては、その「参謀」たるプーチン大統領がウクライナを侵攻して以来、厳しい目が向けられていますが、特にウクライナでも親ロシア派地域の奪還を逸脱して、北西部や首都キーウをミサイル攻撃するようになってから、ウクライナへの侵略、蛮行ととらえられるようになり、トランプ氏もそれまでのプーチン支持を取り下げざるを得なくなりました。
プーチン大統領の「蛮行」「戦争犯罪」が世界に認識されるようになって、トランプ氏のネオナチ・チームへの風当たりが厳しくなりました。米国ではトランプ氏の政敵であるCFR(外交問題評議会)系のバイデン大統領が、トランプ氏を政治的に抹殺すべく、議会侵入との関連でトランプ逮捕を画策しています。
また中国では習近平主席を密かに追い落とす動きがあると言われ、毎年夏に行われる「北戴河」会議を秘密裏に前倒しで実施するとの見方もあります。何年か前には会場近くで大爆発がありました。習近平氏を追い落とそうとの動きも一部に指摘され、すでに習近平氏は「替え玉」だとの説さえあります。
そんな中でトランプ・チームで「財務担当」的な役割を果たしていた安倍氏を失ったことは、ネオナチにとって、チームの勢いが低下し、米国ではバイデン氏のCFRがにわかに勢いを強めそうです。