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リーマンショック再来はない。何年ぶり・何ヶ月ぶりの“ぶりぶり”連発は相場反転の兆し。キャッシュポジションを高めて参戦準備を=山崎和邦

米金利上昇は、金融市場を揺るがす

景気後退を辞さない覚悟で利上げを継続するとFRB議長は断言した。1980年代前半に登場した「伝説のFRB議長」ポール・ボルカーの言い分と同じである。「伝説のFRB議長」は、結果的には手痛い景気後退を余儀なくされ、その代償として米経済の大発展と株価30倍になる元をつくった。

今回財務省は、9月22日に1998年6月以降の24年ぶりの為替市場介入で、単独で「米の協調を得ずに」円買いドル売り介入を断行した。1998年6月の時はアジア金融の最中である。日本ではその前年に金融危機が訪れて、1997年11月に山一證券・三洋証券という二大証券が破綻して、北海道拓殖銀行という大都銀が破綻して、地銀もいくつか破綻し、日本が金融危機の地獄の淵をのぞいた年の翌年のことである。あの時は米国の協調があった。今回、米国政府は日本の単独介入に対して「理解はする」と容認したが、協調介入は否定した。

FRBは4回連続の0.75%の大幅利上げになる可能性を11月に示現するであろう。大幅な利上げは、8月の消費者物価の8.3%の高インフレを景気後退覚悟で抑えこむというFRBの断固たる姿勢である。これは既に米市場に織り込まれており、「20%超のトレンド変化」はNYダウ創設以来15回目(だったと思う)のトレンド変化を示している。

岸田政権下で日本株をずっと売り越してきた海外勢

先週の28日(水)には、心理的節目の2万6,000円を割る場面があった。OECD(経済協力開発機構)の景気先行指数が100を上回るのは日本だけだ。これは半年から9ヶ月先の景気動向を予測している。「100が景気拡大と景気後退の分かれ目」となっている。世界で唯一100を下回っていないのは日本だけだ。景気の位置と企業分析価値観から見て、そういうことが言えないことはない。米国株の予想PER は15倍台である。ピークは23倍だったから、かなり低下してきてはいるが、日本株は11倍台だから、それよりもまだ割安ということになる。割高も割安も、いずれにしても上か下かへ行きすぎる。ただ、日本株は「世界一の世界景気敏感株」である。これについては間違いないだろう。

岸田政権の発足から来月で満1年になる。岸田政権の下では、海外勢は日本株をずっと売り越してきた。割安な日本株に世界の目を振り向かせるために、岸田首相は世界の投資家から意見を聞くフォーラムを設置するということになった。本稿の既報で既に述べているように、米国ではNYダウが20%の上下をもって株価の趨勢が変わったとされる。その20%安はつとに表れた。したがって、米国株は下降トレンドに入ったことが、NYダウ創設以来130年の歴史の中で十数回あった一つの現象として市場では織り込んでいる。今さら出た新しい情報ではない。

*「ドル建・日経平均」はコロナ危機水準に接近。外国人投資家はドル高円安のトレンドに変化が出てくれば、日本株の買いに向かいやすい水準。

*世界の景気敏感株「日本株」は、OECDの方向性と外国人投資家の売買トレンドは概ね一致する。

(OECD・日本取引所データから作成)

社債市場に「リーマンの記憶」を呼び起こすような「不吉なサイン」はない

配当権利落ちの30日、月末兼週末は2万6,000円を割り、7月1日以来のおよそ3ヶ月ぶりの安値を付けた。世界的な金融引き締め・景気後退・企業業績の悪化などで、警戒感が重荷となった。個人投資家の資金は主力株を回避して、新規公開市場へ相当量が向かっていると見られる。新規上場銘柄の初値が公開価格を12銘柄連続で上回り、これは1年ぶりの記録となる。最近の上場銘柄の下げ渋りに安心を感じて、個人投資家が新規上場銘柄に参加しやすくなったと見られる。

一方、海外勢は9月第3週には国内の中長期債が約2.9兆円の売り越しとなった(29日財務省発表)。6月には海外勢が大量に国債を売ったが、それ以来3ヶ月ぶりの高水準となった。

社債市場は、格付けによる銘柄選別の動きが強まっているように見える。資金が格付けの高い債券に振り向けられて、格付けの低いものが売られている。

日経新聞9月30日号の証券欄「ポジション」では「財務体質が脆弱な企業が避けられる足元の状況はリーマンショック前を想起させる。市場に複雑なムードが漂っている」と述べている。高格付銘柄の選好を述べ、その見出しは「漂う『リーマンの記憶』」とある。

筆者がここでひとこと言わせてもらうと

1)リーマンショックは格付けの高いものも低いものも、まとめて上辺だけをトリプルA格債として世界各国に住宅債券を拡販したことが原因となった。今回はそのようなことは行われていない。

2)リーマン危機の教訓で、企業の財務体質は当時に比べて格段良くなっている。その意味で日本企業の財務力は回復途上にあり、企業の信用力も底堅いものがある。

3)社債投資家は当然低格付けのものを売って、高格付けのものに資金を移すのは当然の動きであって、「リーマンの記憶」を呼び起こすような「不吉なサイン」は当たらない。

「暴落相場とインフレ本番はこれからだ」─賢愚の境界はここにある

これは「さわかみ投信」創業者の澤上篤人の著書の新聞広告である。もちろん、ポジショントークであり、中小口の個人投資家を惹きつけるためのものである。

中味を要約すると「各政府・中央銀行の次の暴落相場を止める手はない。ほとんど全ての金融商品は売って換金しよう。今、守りを固めて、次の空前のチャンスをつかめ」というような意味である。

何のことはない。本稿の言い分と同じである。本稿はドラスティックな言い方を敢えてせずに、「買い場探しが始まる」という表現をしているだけだ。もちろん、これのためには換金しておくことが先決である。

拙著「賢者の投資、愚者の投資」で冒頭から言っている賢愚の差は、換金して、キャッシュポジション豊かにして、下げ相場を待つか否かによると言っている。

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第1部:当面の市況
(10)「暴落相場とインフレ 本番はこれからだ」─賢愚の境界はここにある
(11)「死亡後に国論を二分した元首相」
(12)安倍元首相を悼む、アベノミクスの生みの親である浜田宏一氏が語るところ

■ 第2部:中長期の見方
(1)今回の世界経済の減速はリーマンやコロナと違って「事件性の物」ではなく、経済体制内の物だから市場に織り込みやすい。
(2)社長100人アンケートによれば、世界景気は「悪化」が「拡大」より増えて逆転した。
(3)仮称「コロナ相場」の天井3万800円の時は、ドルベースで見れば史上最高値・・・・
(4)物価と賃金がスパイラルで上昇する恐れ
(5)再び、岸田内閣短命説─長期政権の後は、幾つかの短命政権が続くというジンクス
(6)中国の不動産不況の危険度は、日本凋落の原因となった1990年代の「失われた13年」と似ている。
(7)米国のインフレとNYダウ
(8)原油価格が一服して低下したことにより、インフレのピークアウトが見えてくるのではないかと淡い期待があったが・・・
(9)協調介入でなく、単独介入の効果は短い?
(10)市場から無視された「国主導で原発の再構築」の記事
(11)岸田首相は長く封印されてきた原発の検討・議論を再開して、新設や増設を指示した。
(12)「アメリカで広がるESGヘイトの教訓」
(13)日本企業から「老害」はなくならない。
(14)日本の女性議員比率

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