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イカサマ賭博「宝くじ」を買ってしまう7つの認知バイアス。総務省OBに高給を与えるための歪んだ分配構造=神樹兵輔

躊躇するほど泥沼にはまる

そして、今まで宝くじに投じてきた金額の多さを振り返るたびに、先に挙げた「喪失不安バイアス」に陥り、サンクコスト(埋没費用)の呪縛に捕らわれ、続けて買わないと、近づいてきているはずのチャンスを取り逃す――ようにも感じてしまうのです。

こうしたサンクコストの呪縛は、あらゆるところで散見されます。呪縛に陥らないよう、常に自覚が必要なのです。

かつて英仏共同で開発していたコンコルドという超音速旅客機がありました。

開発中に、近い将来この旅客機を完成させたとしても、就航させると騒音問題やコスト面で問題が生ずる――とわかっていたにも関わらず、開発・就航まで強行してしまったのです。

いま開発をやめると、これまでに投じた巨額のコストが無駄になってしまい、もったいない――として完成させたのですが、予想通り採算が取れず、墜落事故まで起こした挙句に、コンコルドは運航停止に到ったのでした。

この事例から、「サンクコスト(埋没費用)」に囚われることを、「コンコルド効果」と呼ぶようにさえなっています。

赤字事業なのにいつまで経ってもやめられなかったり、ダムや道路の建設などでも、当初見積もりに合わないと途中でわかってもやめられずに完成まで強行してしまう――といった事例は世の中に数多くあります。

サンクコストの呪縛から逃れるためには、「これはうまくいかないかも…」「どうも見通しが悪くなってきたな…」という時点で、ただちにやめることが大事なのです。躊躇(ちゅうちょ)は禁物といえます。躊躇するほど、呪縛に捕らわれるからです。

「見切り千両、損切り万両」という株式投資の格言があります。上がると思って買った株がジリジリ下がり始めても、「いや、また再び上がってくるに違いない」などと売るのをためらい、売らずに持ち続けて損失を拡大して「塩漬け株」にしてしまう愚行がよくあります。これを避けるための格言なのです。早目の「損切り」こそが大事な決断と教えてくれているのです。

2002年にノーベル経済学賞を受賞し、一躍脚光を浴びた行動経済学者のダニエル・カーネマン教授が提唱した、不確実性下における意思決定モデル「プロスペクト理論」が、こうした行動に到る原理を教えてくれています。

人の行動は、「目先の利益は得ようとするが、損失があると、それを確定させるのがイヤで回避を図ろうとする」からなのです。「損失回避の法則」が「プロスペクト理論」の中核でした。

すなわち、宝くじがなかなか当たらない――ということがわかっているのであれば、まずは「宝くじは絶対買わない」という選択肢が賢明な選択となるのです。

「宝くじは無駄の塊」であることを理解することが非常に重要な決断につながるのです。

「宝くじ」は最も効率の悪いギャンブルだ

ところで、2021年度の宝くじの売上高8,133億円のうち、当選金に回された部分は、たったの46.2%(3,758億円)しかありませんでした。

残りの53.8%(4,375億円)のうち、地方自治体などに37.5%(3,048億円)、社会貢献広報費に1.4%(117億円)、印刷経費や売り捌き手数料(民間売り場事業者数は約1,400社)などに14.9%(1,210億円)が建前上分配されています。

しかし、これらの分配金合計4,375億円のうち、1割程度(約400億円強)に、総務省傘下の公益法人や関連団体が大小合わせて約100団体近く設立され、ぶら下がっている構図があるのです。

そこに、総務省役人たちが幹部として天下り、1,000万円前後の高給を蝕む形にもなっています。

もちろん、こうした幹部たちは、ろくに仕事もありませんから、ヒマを持て余し、日々無聊(ぶりょう)をかこつ姿が際立っているのです。

このように宝くじは、表向き地方自治補助や社会貢献を謳っていますが、本当のところは、密かにさまざまな団体をつくって、総務省OBの楽園が築かれていたのです。

繰り返しますが、宝くじは、配当率がたったの46.2%しかないイカサマ・ギャンブルです。総務省OBに高給を与えるぐらいなら、せめても配当率をもっと上げるべきでしょう。

他の公営ギャンブルと比べても非常に見劣りするのが、「宝くじ」なのです。

競馬も競輪も競艇もオートレースも約75%もの配当率だからです。民営のパチンコだったら87%もあります。

騙されてはいけないのです。宝くじで一攫千金が得られる確率は、万にひとつどころか、1,000万にひとつしかないのですから。

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