人間は自分に都合よく考える生き物
人は、どんなに不合理と思える場面であっても、自分だけは違う――などと、つい自分には都合よく考えてしまいがちです。それが、人間心理本来の基本的システムだからなのです。
理由としては、次のようなさまざまな「認知バイアス」に支配されているから――と考えられています。
「感情バイアス」………他人には当たらなくても、自分だけは当たりそうだ――と楽観的に考えがちな傾向。
「確証バイアス」………高額当選は10年以上毎回買い続けている人――などといった自分にとってだけ、都合の良い都市伝説などを信じがちな傾向。
「正常性バイアス」………3時間毎に1千万円の当選者が出ている――などという発表データを知ると、たちまち信じて自分の行っている行動も「正常」と考えがちな傾向。
「喪失不安バイアス」………毎回続けて買わないと過去の自分の行動すべてが無駄になってしまう――と考えがちな傾向。
「集団同調性バイアス」………多くの人が行列までして買うのを見ると、自分にもチャンスがあるはずだ――などと考えがちな傾向。
「正当化バイアス」………自分にツキある時はいつもより多く買ったり、自分にツキがないと思える時は、ツキのある人に頼んででも買ってもらいたい――と考えがちな傾向。
「アンカーバイアス」………運の悪いと思われた人が当選して喜んでいる状況を知ると、きっと自分にもいつかチャンスが巡ってくるはずに違いない――と考えがちな傾向。
いかがでしょうか。
認知バイアスのはたらきによって、人はどんな時にでも、自分に都合よく考える生き物なのです。ゆえに、宝くじは買わなければいけない――などと心がはやるのです。
「宝くじ依存症」に陥っている自覚のない人たち
そのため、宝くじ売り場を見たとたんに条件反射のごとく買いたくなって購入し、買ってからは当選発表の日まで「当たりますように…」と念じながら、ワクワクしつつ、当たった時のことを想像して、さまざまな夢を見るわけです。
当たったら、家を買おう、クルマを買おう、借金を返そう、海外旅行に出かけよう、会社を辞めて悠々自適に暮らそう、新規に事業を起こそう……などなど、お金があればできそうなことをあれこれ想像して悦に入るのです。
そして当選発表日になって、毎回同じように「やっぱり当たらなかったな…」などとがっかりします。
しかし、そんな悔しい思いを何回繰り返したとしても、「まあ、宝くじに当たって不幸になる人も多いというから、今回は当たらなくてよかったのかも…」などと、自己正当化までしてしまいがちなのです。
イソップ物語に出てくる狐が、ブドウを獲得できなかった時、「どうせ、あのブドウは酸っぱいヤツに決まっている」などと認知を変え、負け惜しみをつぶやく――という、心理学でいう「合理化」という心の作用までを引き起こすのです。
宝くじに大金を投じてしまった人ほど、こういうことの繰り返しをしています。もはや宝くじ依存症といってもよいわけです。