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グーグル日本元社長が語る超速集団の実態。現場で即断、即決、即アクション。指示を待ったらダメ社員確定=辻野晃一郎

超速会議で即断、即決、即アクション

グーグルは、何をするのもとにかく速いです。私が在籍当時のCEOだったエリック・シュミットは「レスポンスの速さが強い企業文化をつくる」と言っていました。単純に言えば、メール返信ひとつとっても、みんなが即レスすれば1年で片付くプロジェクトも、レスポンスに平均3日かかれば3年かかってしまう、というような話です。

誰もが、自分のto doリストを即断、即決、即アクションで遂行することを心掛けていました。たまには、もう少し時間をかけて熟成させた方が良いのでは……と思うようなことでも、とにかくスピードを最優先していた印象です。即断即決は拙速にも通じますが、判断が間違っていたとなれば、直ちに軌道修正をかけるのです。拙速は巧遅に勝るという考え方でしょう。

経営的な視点でいうと、クラウドは情報の透明化と共有化を促進して、意思決定の質とスピードを高める手段と言えますが、あらゆる面でクラウドの恩恵をフルに引き出していました。単純でわかりやすい事例で言えば、会議の設定は、世界中の全社員が共有しているグーグルカレンダーに、ホストが会議の目的とアジェンダを書き込んで、ゲスト全員の空き時間と会議室の空き時間のアンドを取れば終わりです。

それを見たゲストは、会議の参加者に初対面の人がいれば、あらかじめイントラの社内データベースで、その人の詳細なプロフィールを確認でき、全員が初対面でも、挨拶抜きでいきなり本題に入ることができます。すべての会議室には専用のテレビ会議システムが設営されていて、海外オフィスのメンバーや出張中のメンバーなど、リアルで出席できないゲストは、リモートからオンラインで参加します。

このような会議のアレンジひとつ取っても、日本の大企業などでは、いまだにメールのやり取りでスケジュール調整していたりするので、偉い人たちの会議の設定は、秘書さんたちが大変ですし、社内会議でも初対面の人がいれば、最初に名刺交換したり自己紹介したり、キーメンバーが出張中や休暇中ならば戻るまで待つというような昭和的なスタイルが残っているのとは対照的です。

会議が始まれば、即断即決で話を進め、意思決定の持ち越しや持ち帰りはしません。意思決定に必要な情報が不足していれば、検索で情報収集しながら、さらには、オンラインで社内の識者に都度チャットを入れて、必要なデータや意見を求めながら話を進めていきます。

あらかじめノートテイカーを決めておいて、議事録もリアルタイムでグーグルドライブ上に作成しながら会議を進めます。会議が終わる時には、アクション、責任者、期限を明確にした上で、議事録のエグゼクティブサマリーに記載して終了するので、会議室を出たら直ちにアクションをスタートすることができます。議事録は、閲覧権限さえあれば、社内の誰もが参照できるので、情報の共有も速く、稟議の必要もありません。

仕事途中でも応えてくれるサービス精神旺盛な集団が作る不夜城

グーグルの圧倒的なスピードは、単にクラウドを使いこなしているからというだけではありません。通常の組織だと、忙しそうにしている人に相談や頼み事を持ち掛けても「ちょっと今は手が離せないから、明日まで待って」などと言われることがあると思います。しかし、グーグルではそのような反応に出合ったことがほとんどありませんでした。みんなサービス精神が旺盛で、いつ誰にどんな割り込みをかけても、その瞬間にパッとこちらを向いて要求に答えてくれるのです。それが一段落すると、また自分の仕事に戻るという感じで、待たされることがなく、組織全体のアイドリングタイムが最小化されていて、仕事がサクサクと進む感覚がありました。

また、世界各地のリージョナル・オフィスが連携して仕事をしているのですが、こちらの結果をあちらに投げておいて、こちらが寝ている間に、あちらはこちらの結果をもとに作業を続け、その結果をこちらに投げ返してからあちらは寝るという感覚で、タイムゾーンの違いもうまく組み合わせて連携していました。時間の使い方が効率的で無駄がなく、全体としては、24時間365日フル回転の不夜城を構築していたというイメージです。

「寝ている間に」と述べましたが、個人的なことを告白すれば、グーグルに勤務している間は慢性の睡眠不足でした(笑)。とにかく、こなさなければならない業務量が膨大で、その膨大な業務をこなすためには、全速力で仕事をせざるを得ず、睡眠時間も大幅に削るしかないという日々が続きました。周囲も決して大げさではなく、まるで自分が1日サボれば、世界のインターネットの進化が1日遅くなるというくらいの迫力で働いている印象でした。

最初の頃は、そのスピードに付いていくのに必死でしたし、このような生活を長く続けていけるのだろうかと不安にもなりました。そのため、通勤定期を3カ月単位で買っていたくらいです(笑)。実際、短期間でバーンナウト(燃え尽きること)したり、ドロップアウト(脱落)していく人も、少なくありませんでした。まさに「ドッグイヤー」の世界にどっぷり漬かる毎日だったと言えます。

今号ではここまでにして、次号ではグーグルの採用へのこだわりや、目標管理の方法であるOKRなどについても説明しながら、さらに、グーグルの強さの秘密に迫ってみたいと思います。

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  • グーグルが最強の企業になったわけ(前編) 辻野晃一郎のアタマの中【Vol.4】(5/12)
  • このまま国の形を変えてしまってもいいのでしょうか? 辻野晃一郎のアタマの中【Vol.3】(5/5)

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※本記事は、『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』 2023年5月19日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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image by: Uladzik Kryhin / Shutterstock.com
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『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~ 『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~ 』(2023年5月19日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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