オバマ政権の逆鱗に触れたロシア訪問
しかしその後も安倍政権は、ロシア訪問に向けての緊密な交渉を継続させたため、米財務省が半年ごとに議会に提出する為替報告書のなかで、日本を為替誘導のための監視リストに載せた。
これは一時的ながらも日本株の大きな下落を招いた。これも米政府からの明確なメッセージであると理解してよいだろう。
もちろんすべての出来事を、米政府の圧力と関連づけることは危険だ。
だが、オバマ政権が幾度も不快感を表明しているロシアを5月6日に非公式訪問し、その後もロシアの副首相が来日して関係の強化に向けた緊密な交渉を続けている現在のタイミングと状況を見ると、やはり今回の東京オリンピック招致に関する疑惑は、アメリカの安倍政権に対する明確な圧力という文脈で理解したほうがよいはずだ。
広島訪問の裏で、安倍政権打倒に舵を切ったオバマ
だが、東京オリンピック招致の白紙撤回の可能性すらある今回の圧力は、これまでの圧力とは質的に異なっている。
もし日本の不正支払いが証明され、本当に招致の中止が示唆された場合、国際的な非難から安倍首相は責任を取らざるを得なくなり、辞任に追い込まれる可能性も十分にある。むしろオバマ政権はこの方向に舵を完全に切ったと見ることもできる。
一方、オバマ大統領は26日に開催される伊勢志摩のG7サミットの後、現職の大統領として初めて広島を訪問し、核兵器の廃絶を訴えるスピーチをすることになっている。
これは安倍政権に強い圧力をかける強面のアメリカとは逆の顔だ。両者は一致しない。
しかし、長くなるので歴史的な事例はいちいち示さないが、アメリカの歴代の政権は相手国の国民の反発を懐柔する目的で硬軟合わせた対応を行い、圧力をかけてくることはよく見られることである。
オバマ大統領の広島訪問にはこうした意図があると見ることができる。
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