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米国「不況入り」を示す6つの指標。警戒すべき経済崩壊の“スイッチ”とは?時期は年内から2024年初頭か=高島康司

商業用不動産担保ローン破綻の可能性

このようにアメリカの銀行の格下げが相次いでいる理由は、主に2つである。

1つは「FRB」による金利の引き上げ。そして、米国債格下げによる金利の上昇で米国債の市場価格が下落したことである。

アメリカの主に中小の銀行は、安全な米国債で資産を運用していた。それが金利の上昇による国債価格の下落で含み損が発生し、そのため財務状況が悪化したのである。

今年の3月に起こった「シグナチャー銀行」や「シリコンバレー銀行」の破綻した理由もこれであった。今回は、米国債が格下げられたので、経営悪化の懸念が高まったのだ。

しかし、銀行の破綻に結び付くかもしれないもっと危険性の高い要因がある。それは、商業用不動産の破綻懸念だ。商業用不動産担保ローンの延滞率が急上昇しているのだ。

証券化されたオフィスビルの商業用不動産担保ローン(CMBS)の延滞率は、4月の延滞率2.8%から7月にはローン残高ベースで5.0%に急上昇し、2000年まで遡ったデータでは3ヶ月間で2.2ポイント、今年に入ってからは7ヶ月間で3.4ポイントも急上昇している。

アメリカでは2020年から始まったコロナのパンデミック、大統領選挙の混乱、「BLM運動」の拡大、リモートワークの拡大による住民の郊外移転などによって、主要都市の都心部は空洞化し、犯罪率が急上昇した。これにより、オフィス需要は急減少し、空室率が上昇している。サンフランシスコなどは空室率は25%程度だが、これは他の大都市でも同様な状況だ。

このような状況で延滞率は上昇しているわけだが、このままの状態が続くと、商業用不動産の分野では破綻する会社が確実に増える見込みだ。

ここで問題なのは、商業用不動産にローンを提供しているのは、いま格付け会社によって格下げの対象となっている中小の銀行であることだ。商業用不動産の破綻の連鎖がこれから起こると、こうした銀行は巨額の不良債権を抱えて、破綻の危機に直面することになる。

この銀行危機がスイッチとなって、本格的な不況が始まる可能性もある。

「不況入り」を示す多くの指標

しかし、これから不況に入る可能性を示す数値は、商業用不動産だけではない。調べると、実に多くの指標が出てくる。主なものを列挙する。

<カンファレンス・ボードの景気先行指数>

8月10日、アメリカの経済団体や労働組合などで構成される調査機関、「カンファレンス・ボード(全米産業審議会)」は、将来の経済活動を予測する指標である景気先行指数が、5月の改定値0.6%減に続き、6月も0.7%減の106.1になったと発表した。この低下は、ロイターの世論調査におけるエコノミストの予想中央値0.6%減をわずかに下回った。これまで「カンファレンス・ボード」の景気先行指数の悪化は、不況入りの確実な指標として機能してきた。

<連邦政府と州政府の減収>

景気が減退すると税収も減少する。いまアメリカでは、それが起こっている。「ブルームバーグ」によると、アメリカの州政府および地方政府は、過去最悪の税収減に陥っている。これは、対前年比の割合が急減した史上2番目に悪い結果であった。連邦税収もまた減少しており、現在は景気後退レベルで前年比マイナス10%に近づいている。

Next: ダンボールの売上も急落?まだまだある「不況入り」を示す指標

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