日本の主要メディアでは、米経済の好調さの報道が目立っている。確かに数値だけを見ると、米経済は好調のように見える。しかし、米経済の好景気が今後も続くとは考えにくい。年内か2024年度の第一四半期には、米経済が不況に陥ってもおかしくないことを示唆する情報が多い。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
一見好調な米経済
日本の主要メディアでは、米経済の好調さの報道が目立っている。確かに数値だけを見ると、米経済は好調のように見える。
8月14日、イエレン財務長官は、「米国の見通しについては全体的に非常に良いと感じている」と述べた。景気後退のリスクは残っているが、米経済成長は健全で、雇用市場は非常に強いと確信していると語った。
たしかに、イエレン財務長官の発言を待つまでもなく、直近でも米経済の好調さを伝える数値が目立つ。以下がその代表的な数値だ。
<7月18日>
小売業の売上高:3カ月連続で前の月を上回る
<7月27日>
4月〜6月のGDP:+2.4% 4期連続でプラス
<8月4日>
7月の雇用統計:平均時給前年同月比+4.4%
米経済が好調なので、インフレ率を2%の適性なレベルに引き下げるためには、一段と利上げを行い、好調な経済を減速させる必要がある……との発言すら、金融政策の担当者から聞かれるようになっている。
本当に不況に陥らないのか?
しかし筆者に、米経済の好景気が今後も続くとは考えにくい。前回の記事でも書いたように、年内か2024年度の第一四半期には、米経済が不況に陥ってもおかしくないことを示唆する情報が多い。
周知のように8月2日、大手格付け会社の「フィッチ・レーテングス」は「AAA」の最上位の格付けであった米国債を、1ランク下の「AA+」へと引き下げた。これは2011年8月に「S&P」が行った格下げ以来、12年ぶりのものだ。
この結果、米国債の市場価格は下落し、長期金利も一時4.2%近くまで急騰した。
またこれに続き、8月7日に大手格付け会社の「ムーディーズ」は、中小の米銀10行の格付けを1段階引き下げた。さらに、大手地銀を含む17行について格下げの方向で見直しを進めた。評価が下げられた銀行は全部で27行に及ぶ。これに続き、8日には「フィッチ・レーテングス」も同様の格下げを発表している。
さらに8月15日に「フィッチ・レーテングス」は、米CNBCの番組で米銀大手を含む70行以上を格下げする可能性があると明らかにした。金利高が長引き、銀行の資金調達コストが上がることで収益が悪化すると見込んでいる。
またこれにとどまらず、「フィッチ・レーテングス」のアナリストは最大手銀の「JPモルガン・チェース」も含めて格下げを示唆してもいる。「JPモルガン」や「バンク・オブ・アメリカ」の格付けは現時点で「ダブルAマイナス」としているが、格下げとなれば1段階下の「シングルAプラス」となる可能性がある。
最も格付けが上位の大手行が格下げされれば、中堅以下の銀行もあわせて影響を受ける可能性が高い。経営体質の弱い一部の中小金融機関はジャンク級となる恐れがあるとも見られている。
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