どの統計も見てもアメリカの景気が拡大していることを示している。しかし、米国内のメディアをくまなく調べると、年内か2024年の始めには不況に入るとする予測がかなり多いことに気づく。
ウクライナ情勢と同じく、経済についてもその実態が日本で報道されることはまずない。(『
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』高島康司)
アメリカ経済は不況にならないのか?
ウクライナ情勢の実態が日本で報道されることはまずない。この未報道の状況は、経済についてもそうだ。特にアメリカ経済については楽観的な報道ばかりが目立つが、やはり実態は異なっているようだ。
確かに、米経済に関しては景気の拡大を示す数値が多い。
アメリカの6月の消費者物価の伸び率は3.0%で、12か月連続で伸びが縮小した。一時は9%を越える高い伸びが続いていたアメリカの物価上昇の勢いは、だいぶ落ち着いてきた。また失業率も3.6%と低く、個人消費も伸びている。これを反映して、株価も一時過去最高値まであと5%の水準にまで達した。
また、「FRB」が発表した最新の調査結果で、製造業の活動が増加し、5月は製品の新規注文が前月比で1.7%プラスと、3カ月連続で増加したことがわかった。さらに消費者信頼感も回復している。「全米産業審議会」は消費者信頼感指数が6月に109.7に上昇し、2022年1月以来の最高値となったと述べた。
このように、どの数値も見てもアメリカの景気が拡大していることを示している。
景気が拡大している大きな理由は一時は9%台にもなっていたインフレが、3%にまで下落したことである。アメリカではパンデミックで拡大したリモートワークと、フリーランス化のトレンドが背景になり、企業が必要な人員を集められなくなっている。慢性的な人手不足が常態化している。
このため賃金は継続的に上昇していた。しかし、インフレ率が9%と非常に高い状況では賃金の上昇分がインフレに相殺されてしまい、実質賃金は逆に下落していた。ところがインフレ率が3%と落ち着いたので、賃金の上昇率の方が高くなったのだ。この結果、実質賃金は上昇し、個人消費が拡大したのだ。
これがアメリカの景気拡大の中心的な要因であると説明されている。
年内から2024年の早い時期に不況になる可能性
しかし、米国内のメディアをくまなく調べると、年内か2024年の始めには不況に入るとする予測がかなり多いことに気づく。
例えば、「JPモルガン・アセット・マネジメント」のアナリスト、ジョナサン・リャンは次のように予測している。
「米国は今年末から2024年にかけて景気後退に向かう可能性が高いと考えています。 銀行のバランスシート、特に米国の地方企業のバランスシートは、やや欠陥のあるままであり、銀行融資を再開するためにはまだ修復が必要であるため、その主な原動力は信用状況の引き締めになると考えている。したがって、信用状況の悪化が米国を景気後退に導くと考える。今年末から来年初めにかけて、米国は景気後退に転じるだろう」
「FRB」はこれまで連続10回にわたり金利を引き上げてきた。現在の金利は5.25%になっている。この金利高騰の影響は時間差で現れ、ローン金利や企業融資の金利上昇から信用の収縮が起こるだろうということだ。この専門家の予測を証明する数値は意外に多い。
例えば、将来の経済活動を予測する指標である景気先行指数は、5月の0.6%減に続き、6月も0.7%減の106.1となった。これは、2007-09年の景気後退に向けた準備期間以来、最長の連続低下となった。6月の低下率は、ロイターの世論調査でエコノミストが予想した0.6%低下の中央値を上回った。これは、すでに米国が景気後退に入っている可能性を示唆している数値である。
景気先行指数の収縮は今年に入って加速しており、2022年6-12月期の3.8%減に対し、過去6ヵ月間では4.2%減となっている。