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米国経済、年内にも不況に突入か。日本では報道されない悲観的な予測とリアルな数字=高島康司

消費者の否定的な見通し

こうした否定的な観測は、消費者の実感にも現れている。

世論調査会社、「Numerator」の最新の消費者感情調査によると、アメリカ人の63%が現在アメリカが不況にあると感じているという。さらに、この月例調査の回答者1,000人のうち63%が、米国経済は今後数ヶ月で悪化すると考えている。

「Numerator」によれば、消費者の悲観的な見通しを後押ししているのは、さまざまな懸念である。ひとつは、過去12ヶ月の消費者物価指数(CPI)が着実に低下しているにもかかわらず、世論調査対象者の73%がインフレ率の上昇を予想していると答えたことだ。

調査対象となった消費者の59%が、ガソリン価格の上昇によって他の買い物をする能力が圧迫されていると回答したことを指摘した。61%が経済的懸念として燃料価格の上昇を挙げたが、72%が必要不可欠な商品やサービスの価格上昇を懸念として挙げた。

また、ウクライナでの戦争がまだ続いていることから、18%が米国経済への潜在的な悪影響として世界の出来事を指摘している。その他の懸念としては、退職金/年金制度への悪影響(42%)、政府給付の削減(31%)、株式市場の不安(27%)、雇用の安定/失業(19%)などが挙げられた。

このような不安が背景になり。世論調査対象者のうち、70%が贅沢品やプレミアム商品・サービスに支出することに抵抗があると回答した。同様に、60%以上が預貯金口座からの引き出しに抵抗があり、半数が株式市場への投資に抵抗がある。

回答者は今後数ヶ月の間に、レストラン/バー/フードデリバリー(39%)、旅行(37%)、衣類(34%)、電化製品(33%)、スナック/キャンディー(25%)、おもちゃ/ゲーム/美術工芸品(25%)、アルコール(22%)、健康/美容ケア(19%)、家庭用品/園芸用品(18%)、家庭用品(15%)への支出を抑える予定であることが明らかになった。一方、30%は支出を減らすつもりはないとしている。

不況入りを示すリアルな状況

このような状況を見ると、アメリカの景気の拡大がこれから順調に続くとは考えにくい。

まず「FRB」による金利の引き上げから、時間差で信用収縮が起こる可能性はある。それらは、商業不動産の破綻、ローン金利の上昇による中小企業の経営悪化、そして地方銀行の破綻懸念である。これに消費者心理の冷え込みが重なり、個人消費が縮小するという現象だ。

ということでは、現在の景気のよさは、金利上昇や消費者心理の冷え込みといったことが、時間差で現れる前の一時的な現象であるのかもしれない。

こうした状況は、アメリカ国内のリアルな状況にも現れている。「全米不動産協会によると、6月の中古住宅販売件数は5月に比べ3.3%減少し、季節調整済み年率換算で416万戸となった。昨年6月と比較すると、販売件数は18.9%減少した。これは2009年以来、6月としては最も遅い販売ペースである。

住宅販売は過去10年以上で最低の水準に達し、今年上半期に売買が成立した物件は全体のわずか1%に過ぎなかった。2009年6月は、まさに住宅クラッシュの真っ最中だった。これは、金利上昇のため、住宅ローンの金利が7%にもなっていることが原因だ。

また、ホームレスの数も増大している。全米の各自治体から提供されたデータの分析によると、1月現在、全米の大都市20都市では、子どものいる家庭で7万2,700人がホームレス状態にあり、前年比37.6%増となっている。シカゴ、コロンビア特別区、テキサス州フォートワースでも大幅に増加している。

さらに、異常気象による凶作や不作が農産物価格を将来引き上げる要因にもなる可能性も指摘されている。例えば、サンベルト地帯では、長引く熱波によって気温が3桁まで上昇し、農作物に熱ストレスを与える危険性がある。一方、中西部の穀倉地帯では、2年連続で干ばつに見舞われている地域がある。「米国干ばつモニター」によると、カンザス州の3分の2近くが深刻な干ばつ、極端な干ばつ、または例外的な干ばつに見舞われており、ミズーリ州とネブラスカ州の約半分も同じような荒れた状態である。

Next: 米国の不況で世界は「新しい経済システム」の導入へと向かう?

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