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2024年にも世界大恐慌か。引き金となる6つのメガトレンドと日本経済への影響=高島康司

<世界を動かすメガトレンド(4)慢性的な労働力不足と賃金の上昇圧力>

こうした状況でも、先進国の慢性的な労働力不足は続いている。これにはいくつかの理由がある。パンデミックで拡大したリモートワークでフリーランス化が急速に進んだこと、特にエセンシャルワーカーが別分野でフリーランス化したこと、株や暗号資産への投資収入で生活できる人口が増えたこと、パンデミック後の超過死亡率の増大で労働力人口が減少傾向にあることなどだ。こうした状況が背景となり、先進国では慢性的な労働者不足が恒常化しつつある。

そして、労働者不足が背景になり、賃金の上昇圧力は強くなっている。もちろん日本は例外だが、多くの先進国では、毎年5%を越える賃上げが当たり前になっている。

<世界を動かすメガトレンド(5)インフレの恒常化>

中ロ制裁の長期化や、労働力不足による賃金の上昇圧力などが背景となり、主要先進国ではインフレが恒常化している。昨年に比べると落ち着いてきてはいるものの、それでも主要な先進国では、インフレ率はかなり高い水準に止まっている。高インフレ状態は恒常化する可能性は高い。

<世界を動かすメガトレンド(6)高金利の恒常化>

資本主義のシステムにとって、一定水準を上回るインフレはいわばガンのようなものである。高いインフレは労働賃金の上昇圧力となる。賃金コストの上昇は企業の利益を減少させるので、企業は製品価格の引き上げで補おうとする。この結果、製品価格と労賃が相互に刺激しあってインフレが加速し、インフレのコントロールが効かない状態になる。

これを回避するためのもっとも有効な手段は、中央銀行による金利の引き上げである。事実、欧米の主要先進国の中央銀行は、昨年の2月にウクライナ戦争が始まってから、複数回金利を引き上げている。

高金利の恒常化とその余波

この6つが、世界を動かしているメガトレンドだ。

こうしたメガトレンドの結果として、2024年には顕在化すてくる可能性のあることは、恒常化しつつある高金利がもたらす余波の顕在化という事態だ。もちろん高金利はローン金利を引き上げてしまうので、住宅ローンや商業不動産ローンの破綻を招きかねない。これらのローンが破綻すると、ローンの提供先となった銀行は膨大な不良債権を抱えることになる。そして、特に資金力の弱い銀行が破綻する可能性がある。

もちろん政府と中央銀行はこれに対応するだろうが、対応のスピードが追いつかない場合、金融危機の発生から深刻な景気後退に陥ることになる。

アメリカの具体的な状況

もちろんまだ商業不動産の崩壊は起こっていないし、財務状態が厳しい銀行はあるものの、銀行破綻の連鎖も起こっていない。いまのところは大丈夫だと見てよい。

しかしながら、高金利が恒常化すると、その余波はかなりあると思っていた方がよい。ここで、アメリカの状況を少し具体的に見てみよう。数値は以下のようになっている。

・インフレ率:3.7%
・食料インフレ率:4.30%
・家賃インフレ率:7.27%
・賃金上昇率:5.73%
・金利:5.50%

平均のインフレ率は3.7%だが、食料と家賃という生活に直結したものの価格が高いので、国民への負担は大きい。一方、労働力不足が背景にあるため賃金の上昇率も大きい。これがまたモノの価格をさらに押し上げる原因にもなっている。

Next: 個人も企業も破産続出?いまアメリカで何が起きているのか

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