イギリスの状況
こうした、高金利の恒常化のマイナスの余波が現れているのはもちろんアメリカだけではない。欧米諸国の多くは似たような状況にある。次はイギリスを見て見よう。GDPの成長率は0.2%と低いが、なんとかプラス成長を維持している。
・インフレ率:6.7%
・食料インフレ率:13.6%
・家賃インフレ率:6.4%
・賃金上昇率:7.3%
・金利:5.25%
インフレ率は6.7%とアメリカよりも高い。食料のインフレ率にいたっては、13.6%である。賃金の上昇率を上回っているので、国民生活は相当に厳しいはずだ。インフレをコントロールするために、金利を恒常的に引き上げなければならない。次のような高金利の余波が現れている。
<万引きの急激な上昇>
イギリスでは、特に食料価格の上昇が特徴的だ。生活に直結した食品では、砂糖、55.8%、オリーブオイル、38.3%、冷凍野菜、24.1%などだ。こうしたインフレの高まりを背景にして、万引きが急増している。これはアメリカでも起こっているが、イギリスもすさまじい。
例えば、イギリス中央部の都市のリーズでは、2022年の万引きは800万件に及んでいる。このような増加は、ロンドンを始め、大都市圏でも同じような状況だ。
<失業率の上昇>
イギリスの失業率は4.3%だが、次第に上昇している。これは、2008年の金融危機のリーマンショック時を上回るスピードで、企業のリストラが進んでいる。特にリストラの対象は若年労働力に集中しており、若年者の失業率は12.7%にもなっている。
こうしたリストラの背景になるのは、やはり高インフレと、インフレ抑制のための高金利だ。これらで企業のコストが上昇しているので、コスト削減の必要からリストラが進んでいるのだ。
こうした状況を背景に、寿命に到達する前に死亡する国民の割合が増加している。2023年度では、6.4%の増加だ。また、日本と同じように、イギリスは1970年代から80年代に建設されたインフラが一斉に寿命を迎えている。だが、高インフレと高金利による企業収益の悪化で税収は対前年比で6.6%も落ち込んでいるため、インフラの再建もままならない状況だ。
こうした厳しい状況にあることは、イギリス政府自らが認めている。「国立経済社会研究所(NIESR)」は、2024年末までにイギリスが景気後退に入る確率は60%だと見ている。はるかに高い確率で不況入りするとの見通しの民間シンクタンクも多い。
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