国の経済力と為替水準は必ずしも連動しない
円安になると、日本の経済力が落ちたと言われがちですが、これは因果関係が逆で、円安になったからといって日本が経済的に弱体化したわけではありません。
たとえば、日本のGDPが減少したとしても、これは円安によってドル基準で見た時のものであり、日本の国力が弱くなったから円安になったわけではありません。

1人当たりGDPは、1995年頃から日本は横ばいでアメリカは伸び続けていますが、その間円安が進んでいたわけではありません。
GDPと為替には相関が無いと考えられます。
「国力」というものは曖昧な表現であり、私は「信用力」と言い換えた方が良いと思っています。
国債がデフォルトを起こすような国の通貨は売られて価値が下がっていきますが、日本について考えると、日本円が急に使えなくなるような状況になる可能性は非常に低いです。
世界的に見ても、日本の信用力はかなり高いと思われます。
GDPが下がったから円安になったのではなく、円安になったからドルベースで見た時にGDPが下がるということです。
ファンダメンタルズの面から考えると、やがては円高になる局面もやってくるだろうと楽観的に捉えて良いのではないかと考えています。
円安はマイナスではない
現在、円安は必ずしも悪いことではありません。
例えば、インバウンドであったり、輸出の数量が増加し、大企業や投資家にとっては円安がプラスに働くこともあります。
一方で、円安が進むと物価が上昇し、特に生活必需品やガソリン価格が上がります。
これは一般の人や内需系の企業にとっては厳しい状況となり得ますが、大企業や輸出産業にとっては有利になります。
植田総裁が金利引き上げに慎重なのも、円高になって大企業の業績が下がり、株価の下落につながることを懸念しているものと思われます。
投資家として考えるなら、今は確かに円安になりすぎているところもありますが、ある程度の円安に留まった方が望ましい部分もあります。
少なくとも、日銀が金利を引き上げるデメリットは大きく、借金で苦しい中小企業が金利上昇によってさらに苦しくなることもありますし、変動金利で住宅ローンを組んでいる個人にも影響が出るので、日銀は簡単には金利は上げないと思います。
日本政府も借金があるのでそちらへの配慮もあるでしょう。
為替の動きは日本のニュースや報道で悲観的に捉えられがちですが、過去の事例から考えると、円高時と比べて円安時の方がトータルで経済にとってプラスだと言えます。
円安をポジティブに捉え、長期的な視点で投資に生かすことが重要です。
長期投資家としての為替に対するスタンス
- ファンダメンタルズで円高とは言え、いつ円高になるかは分からない。10年以上先かもしれない。
- 日本の人口が減少する以上、長期的に見れば海外で収益が稼げる企業が強い。
- 為替に関係なく、海外で強い企業を買うのが王道。それが結果的にリスク分散にもなる。
→為替は予想しない
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
』(2023年12月21日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。