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“円安=国力低下”は誤解。長期投資家が知っておくべき為替を動かす「本当の力」=栫井駿介

足元では一時円高となりました。これまでは日米金利差に起因する円安でしたが、日銀の植田総裁の発言から、来年には日銀が利上げを行うのではないかという憶測が広がり、円高傾向が一時的に見られました。このような為替の動きがいつまで続くのか不安を抱いている方も多いかもしれません。しかし、そもそも為替がどういうメカニズムで動くのかをしっかり理解すれば、もっとシンプルに捉えることができ、投資にも臨めるのではないかと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

為替相場の動き

為替を動かす要因には、動的要因と静的要因があります。

動的要因というのは簡単に言うと金利差で、アメリカの金利が上昇している一方、日本は金利が低いため、ドルを買う人が多くなっているということです。
さらには、ほぼゼロ金利で円を借りて、それをドルで運用すれば、金利差の分だけ利ざやが取れるということで、これが円を売ってドルを買うという動きになるので、ドル高が進むということになります。

この「円キャリー取引」が今の円安をもたらしています。

しかし、私はこの動きは一時的なものだと考えています。
なぜなら、静的な要因(ファンダメンタルズ)で考えると、今は円高になる局面だと考えているからです。

静的要因は、基本的には物の交換価値に基づく購買力平価の考え方に基づいています。
同じ物の価格は同じ価格になるという「一物一価の原則」に従って、仮に日本とアメリカで一時的に価格に差ができても、日本で買ってアメリカで売る「裁定取引」が行われ、円の需要が高まり円高となり、やがて同じ物は同じ価格になるように為替は調整されていきます。

今、アメリカでは日本よりも大きくインフレで物価が高騰しています。
アメリカで物を買うためには多くのドルが必要になるので、本来ならドルの価値が薄まるドル安が起こる局面です。
しかし、円キャリー取引や、目先で儲けるための動きが活発で円が売られドルが買われています。

私は、この円安はいつかは解消されると思っています。
それがいつになるかは分かりませんが、タイミングとしては、日本の金利が引き上げられる時や、アメリカの金利が引き下げられる時などが考えられます。

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このように様々な要因が複雑に絡み合い、常に動きながら為替が決まっています。

米ドル/円 月足(SBI証券提供)

米ドル/円 月足(SBI証券提供)

これがここ数年の為替の動きです。
あまり動かない状態が続いていましたが、日米金利差が拡大すると円安が進んだというのが現状です。

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出典:国際通貨研究所

これが、購買力平価の動きを示したグラフです。

赤線が消費者物価、緑が企業物価、水色が輸出物価です。
為替はこの3つの線の間くらいにおさまって動いてきているようですが、それは大まかに捉えてのことであり、極端に円高や円安になっているところもあります。
しかし、極端な動きはいずれ調整されるもので、長期的に考えれば、日本よりもアメリカの方がインフレが進んでいるので、円高ドル安の方向に動いていくはずだというのが購買力平価の考え方です。

ただし、長期的には円高に向かうはずだと言っても、それがいつなのかは読めるものではありません。

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