現在、インドではこのデジタル・インディアによって、フィンテック(Financial Technology)が急激に広がっており、通貨や決済自体も急速にインド社会を変えていこうとしている。
フィンテックは、伝統的な金融サービスに革新的なデジタル技術を組み合わせ、新しいサービスや取引方法を提供する分野であり、これがデジタル・インディアの一翼を担っている。
インドは「遅れた国」という印象を私たちはずっと持ち続けているのだが、「デジタル・インディア」によってインドは急激に変わっていこうとしており、私たちの印象は10年後には大きく変わっている可能性がある。
それほど、インドのデジタル化は急激に進んでいる。インドの人口は14億人だが、すでにインドの携帯電話の契約数は11.5億となっている。移動電話サービスの人口普及率は83.1%、63.5%は4Gサービスを利用している。
このスマートフォンの普及により、インドの消費者が容易にデジタル金融サービスにアクセスできるようになり、銀行口座を持たない人々にも金融サービスが提供されるようになったのだ。これが、インドのフィンテック市場の拡大を牽引している。
インドでは中央銀行が決済システムを作った
インド政府はデジタル・インディアを支援するため、デジタルインフラの整備やデジタルアイデンティティの推進などの取り組みを進めている。
また、フィンテック企業への規制緩和も行い、新たなイノベーションや参入が促進されている。これにより、伝統的な金融機関とフィンテック企業が共存し、競争が促進されている。
インド政府はキャッシュレス社会が推進しているのだが、ここに政府は「デジタル・インディア」運動の一環として導入されたのが、統一支払いインターフェース(UPI)だった。これによって、スマホと銀行口座を直接繋げることで支払いができるようになった。
このUPIを構築したのはインド決済公社であり、この決済公社の中心になったのがインドの中央銀行(インド準備銀行)である。これを見ても、インドは政府から中央銀行から民間から、怒濤のごとくデジタル化に向けて突っ走っているのがわかるはずだ。
2024年7月に新しい紙幣を発行すると言って昭和の古臭い価値観で動いている日本政府とはまるっきり違う。デジタル・インディアを押し進める今のインドは、とにかく最先端に目が向いているのである。
かくして、政府主導のデジタル決済の急速な普及は、小規模な取引から大規模なビジネストランザクションに至るまで、あらゆる経済活動に影響を与えているようになりつつある。
小売業者は現金の管理や取引の容易さを追求し、企業は効率的な経費管理を目指してデジタル決済を採用している。
さらに、インドのフィンテック企業は個人向け融資や投資プラットフォームなど、従来の金融機関が提供していたサービスに新たなアプローチをもたらしている。例えば、デジタル・レンディング(個人向けのデジタル融資)は、従来の融資プロセスを簡素化し、審査結果の迅速な提供が可能になっている。
これにより、低所得層やクレジットヒストリーのない人々にも融資が行き渡り、新たな経済主体が生まれつつある。