経済成長に必要な3要素
そもそも、成長理論のなかに賃上げも価格転嫁もありません。
経済成長の3要素は、「労働投入量」「資本投入量(設備投資)」「生産性」です。これらを拡大することが成長につながります。
労働市場でできることは、賃上げを勝ち取ることではなく、雇用を増やすか、労働時間を増やすか、で成長に寄与できます。
企業は設備投資を拡大して資本面から供給力を高めることで、成長が促されます。価格転嫁で販売価格が高まれば生産増のインセンティブになりますが、価格高が需要を減らすので、結局生産が増えないのは「需要供給曲線」の教える通りです。
そして3つ目の要素が、新技術の導入、開発によって生産性を高めることです。今なら、AIなどを利用して生産性を上げる道も検討されています。
これらによって成長を促し、経済のパイを大きくすることが、賃金増の基礎となります。
賃上げを吸収する生産性を上げよ
成長によって経済のパイを大きくするのみならず、生産性の上昇は賃上げの重要な要素になります。
生産性の改善なしに賃上げをすれば、前述のように収益悪化か賃金物価の悪循環に陥ります。その点、労働生産性を上げることで、単位労働コスト(ULC)が抑えられます。単位労働コストは賃金コストを労働生産性で割ったものです。
従って賃金を5%上げても労働生産性が5%上昇すれば、単位労働コストの上昇はゼロで、企業にとってコスト高にならないため、価格転嫁も必要ありません。一般に、賃上げは生産性上昇の範囲内で、という考えはここにあり、賃金・物価の悪循環を起こさない賃上げの方法ということになります。
米国で昨年、高成長の中で賃上げも大きくなったのですが、4-6月、7-9月ともに労働生産性が大きく上昇したためにULCが上昇せず、企業は価格転嫁の必要がなく、インフレ率が改善を見せました。単位労働コスト(ULC)とインフレ率との間には強い相関があり、このULCを抑えられるかどうかが物価上昇には大きな要素になることが確認されています。






