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株価最高値圏で利下げに転じる光と影。米国経済はソフトランディング成功も、新たな金融リスクの兆候?=斎藤満

成功の裏に幸運も

適度な引き締めが成功した1つの要素として、政策金利の引き上げを5.25%にとどめたことが「過度な景気抑制」につながらなかったことがあります。そのまま6%を超えて引き上げていれば、より強い景気抑制となって、景気の犠牲が大きくなっていた可能性があり、5.25%をピークと判断した点は慧眼と言えます。

しかし、FRBの成功には、「幸運」もありました。世界にインフレが広がる中で、FRBは主要国の中で最初に利上げを実施、しかもかなり急激な利上げとなったので、世界の流動性がドルに集まり、ドル高が進みました。このドル高が原油価格の引き下げ、米国輸入物価の抑制に働き、それ自体がインフレ抑制効果を持ちました。

そればかりか、日本や中国など、まだ大規模緩和を続ける国があり、これらの資金が米国に流入したため、長期金利の上昇を抑制するとともに、米国の金融引き締め効果を緩和、減殺する効果がありました。世界で最初の利上げが世界から流動性を集め、米国のために活用することを可能にしました。

特に、米国株は23年末には過去最高値を付け、巨大な資産効果が米国経済を支えました。米国の家計資産は今年3月の時点で、株式だけで120兆ドルもあり、株価が4%も上がればそれだけで約5兆ドルの資産増となり、富裕層を中心とした消費拡大要因となっています。

米国では低所得層では利上げの影響で金利負担が家計を圧迫している反面、富裕層の資産効果が大きく、消費全体の好調を支えています。

新たな金融相場がバブル醸成のリスク

このように引き締め下でも景気や株価が堅調で、経済のソフトランディングをもたらしつつある「光」の一方で、すでに最高値圏にある米国株が今後利下げの中でさらに高まるとの期待があります。

これが米国経済の実態以上に大きく膨れ上がるバブルとなるリスクが懸念されます。

米国では有力投資家のウォーレン・バフェット氏が、米国株の時価総額がGDPの100%を超えると割高で要注意と見ています。米国のGDPは23年で27.4兆ドルですが、最近ではアップル、マイクロソフト、エヌビディアの3社の株式時価総額だけで10兆ドル近くになっています。米国株全体の時価総額は50兆ドル近くになり、名目GDPの2倍に迫ろうとしています。

バフェット指標からはかなり割高な水準ですが、今後継続的な利下げにより、金利裁定上株が有利になるうえに、利下げで雇用、景気が底堅い動きとなれば、金融相場と業績相場の両面から株価が押し上げられる可能性があり、これは周辺国の株式市場にとっても追い風となります。

しかし、金融相場で膨らんだ分は対GDP比やPERなどの指標から見て、株価がより割高になる可能性を示唆しています。引き締め時に株価が十分調整されていれば、その後の金融緩和で押し上げられても歪みは少ないのですが、引き締め下でも過去最高値圏にあり、すでに割高気味のところへ、さらに金融相場で株価が押し上げられると、風船がより大きく膨らんで、リスクに弱くなります。

Next: 米国株に反落リスク?何らかの「ショック」が起こる可能性

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