愛媛県西条市のホームページなどに掲載されたイラストについて、イラストレーターから著作権侵害を指摘され、使用料として240万円余りを請求されていると、同市の市長が27日の定例会見で明らかにした。
報道によれば、西条市のホームページに掲載されていたウォーキングマップと2つの公民館だよりに使用された2種類のイラストについて、大阪府内のイラストレーターが著作権を侵害されたとし、240万円あまりの損害賠償を求めて大阪地裁に訴えを起こしたとのこと。
ウォーキングマップは、2014年11月から今年7月までホームページ上にアップされていたといい、また2つの公民館だよりは、21年と22年から今年3月まで掲載され、さらに冊子としても配布していたという。
劇的な進化を遂げる画像検索
ネット検索で見つけてきたイラスト等の画像を、自由に使えるフリー素材だと誤解して、各種印刷物に何の気なしに使用した行政機関が、権利者から使用料を請求される……そんなトラブルが、異常なペースで発覚している昨今。
この8月中に発覚したものだけに限っても、滋賀県大津市では公民館が制作した広報誌に使用したイラストに著作権侵害があったとして、同市は権利者に損害賠償金29万4250円を支払ったとの報道が。
さらに青森県八戸市においても、“公民館だより”に掲載したイラストを巡り11万円の損害賠償を求められ、同市がその金額を支払ったと報じられるなど、まさに枚挙に暇がないといった状況だ。
いっぽうで、同様のトラブルは学校現場でも多発しており、「学校新聞」「学級だより」「ほけんだより」といった印刷物に掲載したイラスト等を巡り、権利者から著作権の侵害だと指摘を受け、賠償金を支払ったという事例が、大分県中津市や佐賀県白石町などの学校で発生している。
もっとも学校などの教育機関においては、著作権法第三十五条において「その授業の過程における利用に供することを目的とする場合」に限り、必要と認められる限度において著作物を複製することができる……と定められているとのこと。
授業などで使うプリントなどはこれに該当するとのことなのだが、ただし学級新聞やほけんだよりといった、学校内にて掲示される形で公開される展示物については、イラスト等の使用は許可が必要となるようで、ましてやそれらを学校のサイト上などにアップしてしまうと、完全にアウトとなってしまうようなのだ。
さらに最近では、いわゆる“画像検索”が劇的に進化しており、権利者がその気になれば、自らのイラストなどが盗用されてないかどうかが、類似画像検索でたやすく把握できるように。
上記のように教育機関の印刷物もそうだが、さらに公民館だよりなどといった行政機関の印刷物に関しても、サイト上にひとたびアップすると、イラストなどの無断使用が権利者側に把握されやすくなるということで、そういったことも今回のような事例の爆発的な増加に繋がっていると考えられそうである。
職員のネットリテラシーの低さがトラブルの原因に
このように全国の行政機関や教育機関で相次いでいる著作権侵害事例なのだが、だいたいお決まりのパターンとなっているのが、各担当者がネット上で「イラスト 無料」などのキーワードで画像検索し、それでヒットした画像をそのまま使用するといった流れ。
イラストなどの素材を提供するサイトであれば、利用規約は必ず存在するものだが、それらを確認しようとは一切せず、「“無料”で検索して出てきた画像だからすべてフリー素材だろう」と思い込み、本来ならば使用料が必要な画像を無断でダウンロードして利用するというケースがあまりにも多いようなのだ。
いうなれば、そういった各担当者のネットリテラシーのあまりの低さぶりが、この手のトラブルを招いているということで、巷からは「擁護する余地がほぼない」「ただのバカ案件」などとの厳しい声もあがっているところ。
《インターネット上で「イラスト 無料」などと画像検索し、京都市のイラスト管理会社が保有する絵をダウンロードして挿絵として掲載したという。本来は使用料が必要だったが、利用規約を読まずに計3点を無断使用》
擁護する余地がほぼない事件じゃんね……— ⛩️ の─みん ⛩️ (@nouminT) August 22, 2024
なるほどなあ、って記事読んだけど、これ職員が「イラスト 無料」で検索して出た画像をなにも考えずに使う、っていうただのバカ案件では。
— トーマス107 (@ganymede108) August 22, 2024
それだけに、これまで多くの行政・教育機関はこの手の問題に対して非を認め、権利者が求めるままに損害賠償金を支払う格好で解決することがほとんどだったのだが、今回の西条市はどうやら裁判で争う方針だということで、すでに弁護士費用など435万円を専決処分したということ。
この手のお話で訴訟は初めてかな(´・ω・`)?
自治体HPで著作権侵害の指摘… イラスト使用料240万円余り請求される 市は争う方針 愛媛・西条市 | 愛媛のニュース – Nスタえひめ|あいテレビは6チャンネル (1ページ) https://t.co/E5tkdqWs5q
— 初心シャ (@tihoujiti12345) August 27, 2024
ネットからダウンロードしたのならば、争わず使用料さっさと払うべきな気がするけど…
自治体HPで著作権侵害の指摘… イラスト使用料240万円余り請求される 市は争う方針 愛媛・西条市(あいテレビ)https://t.co/nxtUBLx4Z2
— カミジョウヒロ (@HIRO_KAMIJOH) August 27, 2024
自治体HPで著作権侵害の指摘… イラスト使用料240万円余り請求される 市は争う方針 愛媛・西条市https://t.co/0VPO6SmakA
ネットからダウンロードしたイラストを無許可で使った時点で裁判で負け確定しているんじゃ? 示談にしたほうが傷が浅いと思う 裁判だと自治体のイメージもダウン
— 伊織舞也にゃんぱすー (@losttechnology) August 28, 2024
市としては、掲載自体は認めているものの、使用料の金額や著作権侵害に当たるのかといった点を争う気だということだが、これに対しては「争わず使用料さっさと払うべきな気がするけど…」「示談にしたほうが傷が浅いと思う」などの否定的な反応もチラホラ。著作権侵害側と権利者の法廷闘争という、この手の話としては珍しいパターンを辿ることとなったこのケースが、最終的にどのような決着をみるのか、大いに注目されるところである。
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