ルースの背後には何がある?
これを見るとルースは、ロシアのウクライナ侵攻に怒り、同国を支援していた熱烈なウクライナ擁護者の一人であるように見える。アメリカには、ウクライナ軍が組織する「国際部隊」に傭兵となって参加する人々がかなりの数がいる。ライアン・ルースは、年齢と軍隊経験のないことから入隊を拒否されたが、アメリカによくいるこうしたボランティアの一人でった。
ルースはいまでもアマゾンで購入可能な自費出版の本、「ウクライナの勝利できない戦争」を書いている。この本の中で、ロシア寄りのトランプの姿勢を批判し、トランプを殺す自由があると書いている。
これだけ見るとルースは、トランプのウクライナ支援を打ち切るとの公約に怒った単独犯のように見える。ウクライナの「国際部隊」に参加したアメリカ人傭兵と同じメンタリティーだ。
「北大西洋同志機構(NAFO)」とのつながり
だが、ルースは単独で行動する孤立した人物であるとは考えにくい情報もある。先の2023年にルースに対して行われた「ニューヨークタイムス紙」のインタビューで、「ワシントンD.C.で、ウクライナについて何人かの議員と2時間の会談を予定している」と話していた。記事では、この会談が行われたかどうかは確認できないとしているが、もし実際に行われていたとすれば、ルースはワシントンの政治家となんらかの関係をもっていた可能性もある。
まだはっきりした証拠はないものの、ルースは「北大西洋同志機構(NAFO)」という国際組織のメンバーだった可能性が高いとする記事が多い。「NAFO」とは、2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻に関するロシアのプロパガンダと偽情報に対抗することを目的とする、インターネットユーザー有志の集団である。その名称は、「NATO」のパロディである。主な活動は、「X」などのSNS上に、親ウクライナ的で反ロシアの嘲笑的なミームや、ロシアの宣伝投稿に対する低俗な返信、また下品な編集済み画像を投稿することである。「NAFO」の参加者は「Fella」と呼
ばれ、戯画化された柴犬のキャラクターで象徴化されている。
ただ、「NAFO」が注目されているのは、こうしたネット上の活動だけではない。ウクライナ軍や親ウクライナ運動のための資金調達活動も行っている。「NAFO」のサイトを見ると、これまでに実現した支援内容が掲載されている。
・13億4300万円相当の資金支援
・40台の発電機
・291機のドローン
・996機のFPVドローン
・278台のドローン妨害装置
・200台の通信機
民間団体としては、かなりの規模であることは間違いない。1980年代のレーガン政権以来米政府は、NGOを通して外国に対する工作を展開している。反政府の抗議運動を計画して煽り、政権を添付させた各地の「カラー革命」などは、その典型である。「全米民主化基金(NES)」や「フリーダムハウス」などはその典型だ。これらのNGOは、国務省の管理と指令で動いている。
「ノルウェー南東部大学」教授で、米政府のNGOを使った対外工作研究の権威であるグレン・ディーセンは、「NAFO」もこうしたNGOの一つであり、国務省、ないしは国防総省の管理下にある可能性が高いとしている。
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