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米国、2027年に中国との軍事衝突を決意か?日本も台湾有事に巻き込まれる可能性=高島康司

「プロジェクト33」と圧倒的な中国の海軍力

台湾有事の際、アメリカと中国が戦術核の使用を検討しており、それに米空軍が対処するための机上訓練を行っているというのはまったく物騒な話だが、こうした状況に幅広く対応するために、米海軍は「プロジェクト33」を発表した。これは、早ければ2027年に起こりうる台湾をめぐる中国との対決に備え、軍事体制と即応態勢の再編を提言したものだ。

これは、「米海軍研究所(USNI)」が発表した「アメリカ海軍の戦闘能力向上のための海軍作戦部長ナビゲーション計画」、別名「プロジェクト33」と呼ばれる計画だ。この計画は、米軍の整備の遅れや人材確保の課題に対処し、即応性と能力の拡大に焦点を当てることを目的としている。

この計画には、2つの主要な目標が設定されている。海軍の即応態勢の強化と、アメリカの統合戦闘能力における米海軍の役割の強化である。そして、整備の遅れへの対応、ロボットおよび自律システムの拡張、水兵の採用と定着率の向上、インフラの強化など、7つの重要な分野を特定している。

このような整備計画が必要になった理由は、中国海軍の大幅な増強とアメリカの出遅れである。現在、中国は370隻の艦船と潜水艦、140隻以上の主要水上戦闘艦を保有し、世界最大の海軍を擁している。さらに、中国の13の海軍造船所は、アメリカの7つの海軍造船所を合わせたよりも大きな生産能力があり、アメリカの海軍艦艇建造における不利な状況が拡大している。また、アメリカの造船所では熟練労働者の不足に直面しており、過去の予算削減やレイオフにより、海軍建造に必要な専門労働力が枯渇している。

さらにアメリカは、時代遅れの調達戦略や、空母、駆逐艦、揚陸艦などの高コストな旧式軍艦への依存も、アメリカの艦隊を迅速に拡張する能力を妨げているとされている。

一方中国は、AIとビッグデータを使用してアメリカの運用システムの弱点を迅速に特定し、複数の領域から力を結集してその弱点を精密攻撃する「多領域精密戦争(MDPW)」構想を通じて、アメリカの脆弱性を突いてくる可能性が高い。

これはアメリカにとっては由々しき事態である。こうした中国優位の状況に対処するためアメリカは、海軍戦においてますます重要になっているロボット工学とAIを統合し、米海軍の自律戦闘システムの構築を目指している。それを戦力に組み込むことで、技術革新と破壊的な戦術によって中国の造船優位に対抗する戦略を目指している。

焦る米海軍と大きな危機意識

中国の相対的な優位と米海軍の劣勢への強い危機感が、最近発表された「プロジェクト33」には滲み出ている。この危機感は非常に強い。同文書には次のようにある。

「中華人民共和国(PRC)の主席は、2027年までに戦争に備えるよう軍に指示しているが、我々はそれ以上の準備を整える。

現在、中国が我々の海軍に突きつけている課題は、単に中国海軍艦隊の規模を上回るものとなっている。艦船は確かに重要だが、戦力となる艦船の数やトン数だけで脅威を評価する時代は終わった。多領域精密戦争、グレーゾーンおよび経済キャンペーンといった作戦概念、デュアルユースインフラ(例えば飛行場)やデュアルユース部隊(例えば中国の海上民兵)の拡大、そして核兵器の増強などを通じて、中国は複雑な多領域・多軸の脅威を提示している。

中国海軍、ロケット軍、宇宙軍、空軍、サイバー軍は、巨大な産業基盤に支えられ、米国を打ち負かすために特別に設計された統合戦闘エコシステムへと統合されつつある。中国の防衛産業基盤は戦時体制にあり、現在、世界最大の造船能力を中国海軍が有している。

これに対応するため、米国は同盟国、パートナー、および米国の利益に対する中国の脅威を抑止し、必要とあれば断固として勝利を収めるためには、統合された全領域の制海権を実現する戦闘エコシステムの一部である航行計画に引き続き取り組む必要があると理解している」

このような危機感が背景となり、米海軍は中国の海軍力の増強に対抗するための取り組みを加速させようとしている。だがアメリカは、やはり造船能力の遅れと90年代の時代遅れのテクノロジーに基づく軍事システムという厳しい現実を直視せざるを得ず、潜在的な紛争において重大な脆弱性を露呈するリスクに直面していると多くの専門家は見ている。

Next: 脅威は中国だけではない。アメリカは日本も巻き込んで軍拡へ進んでいる

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