ところで、「プロジェクト33」で脅威として認識されているのは、もちろん中国だけではない。ロシアとイランも脅威の対象に指定されている。同文書には次のようにある。
傷つき孤立したロシアは依然として危険である。ロシアによるウクライナへの違法かつ挑発行為のない侵攻は、世界的な非難を招き、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟するきっかけとなった。しかし、戦場においては、ロシアは作戦上の学習能力を示し、技術的および戦術的にウクライナの革新に適応している。
モスクワ、北京、テヘラン、そして平壌は連携を強化し、情報領域において米国、同盟国、およびパートナーを積極的に標的にしている。海底パイプラインやケーブルへの被害は、海底インフラが標的となり得ることを浮き彫りにした。黒海での損失にもかかわらず、ロシアの艦隊は依然として、北極海や大西洋、地中海、バルト海、北太平洋において戦闘能力を維持している。
また、ロシアは世界最大の核兵器備蓄も保有している。我々は、欧州大西洋地域の同盟国やパートナーとともに、信頼に足る抑止力を引き続き支援しなければならない。
さらにイランについては、以下のようにある。
高度に相互接続された脅威は、平和を脆弱なものにする。2023年のハマスのイスラエル攻撃では、他のイランの代理勢力による攻撃を抑止し、より広範な紛争のリスクを軽減するために、中東全域に海軍を展開する必要があった。ハマスに鼓舞され、イランに武装させられたフーシ派は、紅海の重要な狭水道であるバブ・エル・マンデブ海峡を通過する商船を標的にし、これにより、我が国の水兵たちは、第二次世界大戦以来、最も執拗な敵対的攻撃にさらされることとなった。
また、ロシアにも武器を供給しているイランは、イスラエルに対して数百機の無人機とミサイルを発射し、この地域全体を戦争の瀬戸際に追い込んだ。これらの出来事は、目に見える、あるいは見えないつながりによって安全保障環境がいかに急速に変化し得るかを証明しており、また、わが国の意思決定者に柔軟な対応オプションを提供するために、海軍がどれほど不可欠であるかを示している。
アメリカは日本を巻き込んで戦艦を建造
しかし、さまざまな軍事専門家の記事を見ると、想定されている2027年までにアメリカの軍事力が中国にキャッチアップできる水準まで整備できるとする見方には相当に否定的だ。
すでにこのメルマガの第813回の記事でも紹介したように、「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」の最新レポートでは、中国は2019年から2023年の間には64の技術分野のうち57分野で首位に立っており、昨年のランキング(2018年から2022年)で52の技術分野で首位に立っていたときよりも、そのリードをさらに広げている。中国は、量子センサー、高性能コンピューティング、重力センサー、ロケット打ち上げ技術、先進的な集積回路設計および半導体チップ製造の分野で新たな進歩を遂げた。
中国の圧倒的なテクノロジーの優位性は、もちろん軍事技術でも同様であろう。他の最先端テクノロジーの分野では中国に凌駕されながらも、軍事技術分野だけはアメリカが優位であるとは考えにくい。最先端テクノロジーへの依存度がもっとも高いのは、軍事分野である。第813回の記事で紹介したが、国際政治学者のランドール・シュウェラーは「CFR」の機関誌、「フォーリンアフェアーズ誌」に次のように書いている。
実際には、米国のリーダーシップがほぼ80年を経て、世界は覇権秩序から回復された勢力均衡への移行期に入っている。これまでの勢力均衡システムと同様に、このシステムでも世界的な不満、不調和、大国間の競争が特徴となるだろう。(中略)米国はまさに「疲弊した巨人」となり、対外的な公約を守る能力も、それを守ろうとする意欲も低下している。
このような「疲弊した老人」であるアメリカの海軍が、2027年の台湾有事を想定して準備するには相当に無理がある。単独では不可能だ。
その結果、東アジアで艦船数を増やすための現実的な手段として、日本や韓国などの重要な同盟国に海軍艦船の建造を外注することがいま検討されている。







