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半導体株「レーザーテック」は今が買い?長期投資に向く銘柄か?成長性とリスクを解説=栫井駿介

リスクはある?

栫井:競合リスク以外に何かリスクはあるでしょうか?

元村:やはり事業領域が幅広くなく、一本足に近いという状況があります。マスクの欠陥装置というところでは高いシェアを示してはいますが、ウエハの欠陥検査装置など市場が大きいところではそれほどシェアは取れていません。特定領域に依存しているリスクはあります。

栫井:一本足でやってきたことが強みにもなりましたが、逆に弱みにもなり得るということですね。

元村:なので当然市場の需給バランスによっても業績は左右されることになって、そういったリスクもありますね。

栫井:株価が乱高下していますがこれは何が影響しているのでしょうか。

元村:様々な要因があると思いますが、1つは少し仕手株化しているなという感じはあります。EUVの欠陥検査装置を作っているのはレーザーテックだけということで注目され、いろいろな人たちが出入りしているところはあります。

栫井:どんな材料で大きく動いていますか?

元村:将来性といったトピックに影響されることが多いですね。例えば2020年頃にKLAがEUVの欠陥検査装置を開発しているというニュースが出た時があって、こういうタイミングで株価がけっこう動きますね。技術的な優位性は一般の人にとってはなかなか分からないので、その中で競合が出てくるという話があると投資家心理的にはすごく心配になるので。

栫井:KLAが開発するかということはレーザーテックにとって死活問題ですもんね。KLAが開発したとしても分け合っていくことにはなると思いますが、今のような高い利益率とか急成長は難しくなるのかなというリスクはありますね。

元村:一時的に鈍化する可能性はありますね。ただ、同時に単価も上がりますし、今レーザーテック自体が受注してから納品するまで1年半~2年くらいかかっているので、それを穴埋めするのがKLAという形になるパターンもあるかもしれません。結果的に市場の成長スピードはプレーヤーが入った方が速かった、ということも可能性としてはあります。

栫井:レーザーテックの商品が高いので、世の中の流れが7㎚よりも前のプロセスに戻っていくという心配はないのでしょうか。

元村:微細化されていない分野も成長はすると思います。自動運転車とかEV車とかですね。これらにはそこまで最先端の技術は必要ないので必ずしもレーザーテックの商品じゃなくても用が足りる場面もあります。

栫井:やはりスマホとか小さいものに入れようとするから半導体も小さくしないといけないということなんですか?

元村:基本的にはそういうことです。もちろん運転の制御をしたりする脳みその部分など要所要所では高性能の半導体が必要になりますが、それ以外の部分では最先端のものでなくても良いですし、必ずしも小さくなくても良いということですね。

栫井:最先端のものも需要が増えていくし、そうでないものに関してもまだまだ必要になってくるということですね。

長期投資対象になるか?

栫井:長期投資を考えた時に、レーザーテックは持ち続けられる銘柄と言えるでしょうか?数年は心配ないということでしたが、KLAが開発するとなった時にレーザーテックはどうなるのでしょうか。

元村:人によって考えは分かれるとは思いますが、私は十分投資に値する企業だと思っています。専門的な話になりますが、特許の出願件数やその内容を見ると、EUVに関しては技術的な優位性がものすごく高いと思われます。技術的なところでKLAが割り込んでくるようなことはないのではないかと感じてはいます。

栫井:少し意地悪かもしれませんが、技術で他に追い付かれなかったものって無いじゃないですか。投資家としても追いつかれる前提で動く必要があると思いますが、もし追い付かれた時にレーザーテックは何をやっていくのでしょうか。

元村:確かにそこの部分はリスクだと思います。

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これがレーザーテックの中期経営計画に書かれていたもので、どの領域に開発を進めていくのかを示した図になりますが、今はマスクの欠陥検査装置の部分が下支えしていますが、ウエハの欠陥検査装置はKLAなど海外勢が強いんですね。今のところ、シリコン・カーバイトや窒素ガリウムといった新しい素材のウエハの欠陥検査の領域では技術開発が進んでいて優位性を築きつつはありますが、ここは市場も大きくて競合も力を入れてくるはずなので、レーザーテックが右肩上がりでいくかどうかはまだ分からないですね。やはりマスクの欠陥検査装置に依存している状態なので、ここが追い付かれると厳しいなという印象があります。

栫井:今この分野だからこそ飛び抜けられたというところがあって、既に他がいる所に入っていくのはなかなか大変ですし、もしできたとしても今ほどの高い利益率や成長を取ることは難しい気もします。

元村:そうですね。コア技術を最も活かせている部分がマスク検査装置だという事実はなかなか変えられないと思います。

栫井:そうでなければKLAとガチンコでたたかうことになってしまいますもんね。

元村:レーザーテックもそこだけは競合優位性を奪われないように開発を進めていくだろうと思います。

栫井:「㎚(ナノメーター)からA(オングストローム)世代へ」とありますが、そうなるとEUVとはまた違う技術の話になるのでしょうか。

元村:おそらくそうなると思います。次世代の技術を先取りしていくことで、今までは実績を出してきたというのがレーザーテックです。

Next: 投資タイミングとしては今?レーザーテックの今後は……

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