浜松ホトニクス<6965>は、投資家からの注目度が高く、多くの人がその実力に高い関心を寄せる企業です。調べれば調べるほど、すごい技術を持った会社だと感じられます。しかし、その凄みがなかなか伝わりにくいという側面もあるようです。今回は、そんな浜松ホトニクスの「凄み」について、詳しく探っていきましょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
浜松ホトニクスとは?「光を操る」その技術の核心
浜松ホトニクスは、端的に言えば「光を操る企業」です。人間の目では観測できないような非常に微弱な光を検知する技術や、光を出してその反応を見る技術 に強みを持っています。これらの技術を用いた部品やモジュールを製造しています。
浜松ホトニクスの技術は、想像以上に様々な分野で活用されています。
<医療分野>
最も分かりやすい事例の一つが医療現場です。PETやCTスキャンなど、光を使って体の内部を観測する機器に、光を検知する部品やモジュールが使われています。これにより、切開せずに体の中の様子を知ることが可能になっています。歯医者さんで使用される歯のレントゲン装置にも、同社の部品が組み込まれています。
<学術研究分野>
研究機関でも広く使われています。電子顕微鏡や、素粒子研究、宇宙産業 といった最先端分野に貢献しています。特に、ノーベル物理学賞の対象となった素粒子(ニュートリノなど)を捉えるためのスーパーカミオカンデやハイパーカミオカンデでは、微弱な宇宙の光を検知する「光電子増倍管」が大量に使用されており、浜松ホトニクスはこの分野で世界シェア約9割を占めています。この技術のおかげで、ニュートリノやヒッグス粒子、重力波などの存在を確認することができ、ノーベル賞級の研究に大きく貢献しています。微弱な光の粒子の最小単位を捉えるこの技術は、宇宙の誕生や経過時間などを知る手がかりにもなります。
<産業分野>
近年特に伸びているのが産業分野、中でも半導体業界向けです。半導体の製造装置や検査機に同社の部品が組み込まれています。現在の半導体回路の描画には光(特にEUVなど微弱な光)が使われており、光に強い浜松ホトニクスの技術は不可欠な存在です。半導体の回路が正確に描かれているか、故障がないかなどを、ウェハに直接触れずに光を通して検査する装置にも、同社の部品が使われています。また、タイヤの内部の劣化や故障を、中身を開けずに検査する技術にも同社の技術が活用されています。

浜松ホトニクス<6965> 週足(SBI証券提供)
競合他社との違いと「唯一無二」の強み
光電子部品を作る会社は他にも国内(堀場製作所、サンテックなど)や海外(フランスのフォトニなど)に存在します。しかし、堀場製作所が自動車の排ガスや半導体の成分測定など「測る」ことに強いのに対し、浜松ホトニクスは光の検知や発光など「目に近い領域」に強みを持っています。海外の競合が軍事用を中心としているのに対し、浜松ホトニクスは宇宙研究などで圧倒的な存在感を示しています。
最も大きな違いは、「他には真似できない、誰も作れないものを持っている」様々な要素を内製化しており、顧客の「こういうことがやりたい」という要望に、これらの技術を組み合わせて応えられる会社は、世界的に見てもほとんどありません。