トヨタ自動車の創業家に連なる企業、豊田自動織機<6201>。一般にはあまり知られていない存在ですが、実はトヨタ株を大量に保有し、フォークリフト市場でも世界トップの地位を築いています。そんな豊田自動織機に対し、トヨタ創業家が「買収・非公開化」を提案したというニュースが報じられました。この動きは、トヨタグループの源流企業を守るための「先手」だったのです。その背景にある危機感とは――。(『「ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!」連動メルマガ』児島康孝)
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一般の方々にはイメージが薄い豊田自動織機
豊田自動織機<6201>という会社に一般の人々のイメージが薄いのは、仕方がない話でしょう。
あまりにもトヨタ自動車の存在が巨大すぎるわけですが、投資家やトヨタグループについて少し知っている人にとっては、トヨタ自動車の創業家の源流の会社で「自動織り機」を製造・販売している会社――という認識を持っていると思います。

豊田自動織機 <6201> 月足(SBI証券提供)
大正15年(1926年)に豊田佐吉氏が創業したのがこの会社。ちなみに、関東大震災は大正12年(1923年)に起きています。
トヨタ創業家が資本政策で「先手」
トヨタ創業家の動きは、ブルームバーグなど各社の記事で報道されていますが、これは、明らかにトヨタ株を保有する豊田自動織機が敵対的に買収される事態を防ぐとともに、トヨタグループの源流企業はトヨタ創業家が今後も掌握するという「決意表明」でしょう。
※参考:トヨタ創業家が豊田織に買収・非公開化提案-関係者 – Bloomberg(2025年4月26日配信)
セブン-イレブンを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスが、買収にさらされており、創業家を中心とする「防衛」買収は、断念されたとみられていますから、こうした出来事も、トヨタ自動車の豊田章男会長など創業家を「先手必勝」へと後押しした形になるのでしょう。
豊田自動織機は、ブルームバーグの報道によれば、トヨタ自動車株の9.07%を保有しています。またフォークリフトなどの売上を急速に伸ばしており、この分野での世界シェアはトップです。
フォークリフトと言えばコマツや日立を連想しがちなのですが、豊田自動織機が圧倒的にこの分野でトップとなっています。
豊田自動織機のホームページで公表されていますが、急速な売上高の伸びが確認できます。
・豊田自動織機ホームページで公表されている「部門別売上高の推移」
https://www.toyota-shokki.co.jp/investors/earnings/divisions/
ということは、もしフォークリフトの分野で敵対的な買収を仕掛ける企業・企業連合が現れた場合、フォークリフトの世界シェアトップを握り、トヨタ自動車の大株主にもなれるわけです。
つまり、単にトヨタグループの源流企業でトヨタ株を大量に保有しているだけではなく、フォークリフトの世界シェアトップ企業という意味が急速に出てきたことになります。
トヨタ自動車の豊田章男会長は、2010年前後に(当時社長)アメリカでのプリウスやレクサスの急加速リコール問題に対応して米メディアや世論の猛批判を受けたことがあり、2010年2月にはアメリカ下院の公聴会にも呼ばれています。
※参考:トヨタ社長、米公聴会出席へ:時事ドットコム(2010年2月19日配信)
こうした世界標準とも言えるのかどうか厳しい体験もあり(当時の訪米では、米国のトヨタ従業員に励まされて男泣きしたというエピソードも)、当時は、対応を誤ればトヨタ自動車の存亡の危機にもなりかねないぐらいでした。
これを社長として創業家の豊田章男会長は直接経験しており、豊田自動織機についても、今のうちに対応しなければ、海外勢を含めた買収攻勢にさらされかねない――という判断なのでしょう。
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『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2025年4月27日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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日本に影響を与えてきた欧米勢の勢力図が変化し、国際情勢も激変の時期を迎えています。トランプ政権の前の欧米勢力は、日本の1990年のバブル崩壊以降、日本の衰退を狙ってきました。超長期の経済サイクルである、コンドラチェフ・サイクルが、戦後最悪の大底でもあったことから、日本経済はデフレに陥り、低迷したままであったのです。ところが、トランプ政権の誕生以降、欧米勢の勢力は変化し、日本の今後も、大きく変わろうとしています。このメルマガでは、有料読者に限定して、ちょっと書きにくい話にも踏み込んで、欧米勢の動きをお伝えします。