家具・インテリア大手のニトリ<9843>について、深く掘り下げていきたいと思います。 ニトリといえば、かつてコロナ禍での在宅需要を背景に業績を大きく伸ばしましたが、その後株価は上下動を繰り返しています。 特にこの1年で株価が4割上昇したかと思えば、急落するなど、投資家の関心も高い銘柄と言えるでしょう。
そこで今回は、ニトリが円高によってどのような恩恵を受けるのか、そしてその長期的な成長戦略について、詳しく分析していきたいと思います。 ぜひ最後までお読みいただき、皆様の投資判断の一助となれば幸いです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
株価の推移と直近の変動要因
まず、ニトリの株価の推移を見ていきましょう。

ニトリホールディングス<9843> 月足(SBI証券提供)
月足で見ると、2019年から2021年にかけて大きく上昇していることが分かります。これは、在宅需要の増加によってニトリの家具が順調に売れたことが主な要因と考えられます。しかし、その後2020年から2023年にかけて株価はやや下落し、2024年には一時大きく上昇したものの、すぐに下落に転じ、現在も下落傾向にあります。
2024年に入って株価が急騰した背景には、2024年3月期第3四半期(2023年10月~12月)の決算で、四半期単体として過去最高の売上利益を達成したことがあります。しかし、その後すぐに株価が下落したのは、2025年3月期の通期決算発表時に示された業績予想が、市場の期待を下回ったため、失望感が広がったためです。

ニトリホールディングス<9843> 業績(SBI証券提供)
このように、ニトリは投資家の期待によって株価が大きく変動しやすい側面があると言えるでしょう。
驚異の36期連続増収増益の終焉と新たな成長への模索
ニトリの長期的な業績を見ると、36期連続増収増益という驚異的な記録を達成してきた企業であることが分かります。
この偉業を達成するために、ニトリは様々な施策を講じてきました。例えば、2021年2月にはホームセンターの島忠を買収し、業績拡大に貢献しました。
また、2022年3月期には、決算期間を1ヶ月延長することで、無理やり増収増益を達成したとも見られる動きもありました。
しかし、2023年3月期は13ヶ月分の業績であったのに対し、2024年3月期は12ヶ月に戻った影響もあり、ついに連続増収増益の記録は途絶えてしまいました。とはいえ、36期連続という記録は、リーマンショックやコロナ禍といった経済の変動期を乗り越えてきた証であり、特筆すべき偉業と言えるでしょう。
コロナ禍においては特需があった反面、家具という性質上、一度購入すると買い替えサイクルが長いため、その後の業績維持には難しさもあったと考えられます。