『ハンギョレ新聞』は,次のような論調を展開している。
「李候補(共に民主党)の支持者だけでなく中道層までもが、最高裁長官を批判する理由は、選挙で選ばれていない権力である司法府が、大統領候補を決定しようとしているからだ。選挙運動が始まれば、司法府は進行中の裁判を停止するのが慣例だ」とした。
司法府は、三権分立の立場から言えば独立した存在である。三権分立の理屈は、ハンギョレ新聞が最も好むフレーズである。それにもかかわらず、行政府トップの大統領選挙であるから、法の精神を曲げろと主張している。不思議な論理を展開しているのだ。
ソウル高裁は、こうした非難に耐えられず判決を延期した。李在明氏の差し戻し審の初公判を当初予定していた5月15日から6月18日に変更すると明らかにした。6月3日投開票の大統領選の前に、李氏の量刑が確定する可能性はなくなった。
「共に民主党」の動きは、これだけに止まらない。国会法制司法委員会で、「大統領当選時の裁判停止」を主な内容とする刑事訴訟法改正案を単独で可決した。「被告が大統領に当選した場合、裁判所は任期終了まで裁判を停止しなければならない」という内容だ。この改正案は、李在明候補ただ1人のための法律であり、近代民主国家の議会でこんな法律は一度たりとも成立したことはないだろう。『朝鮮日報』社説は、こう慨嘆している。
共に民主党はこの改正案には、「無罪を宣告する予定であれば裁判を継続してもよい」との条項まで入れたという。「被告の事件に対して無罪、免訴、刑の免除または公訴棄却の裁判を行うことが明白な場合はその限りではない」との内容である。
ここまで来ると、国民は「法の前に平等」という精神が完全に消え失せている。「革命」と言っても差し支えないほどの事態を迎えているのだ。
李氏政権で終末論へ拍車
この状況で突入する6月3日の大統領選挙は、李氏が50%前後の支持率を集めていることから、次期大統領へ最短距離にいる。これが現実になった場合、韓国の外交や経済はどうなるかが、注目点である。
外交では一応、「反日」を抑えているが再燃の可能性を秘めている。それは、次の言葉に表れている。「日本は、韓国の4番目の貿易相手国であり、両国の安全保障協力は北東アジアの平和と韓国の繁栄をけん引してきた韓米日の安全保障同盟の基盤でもある」としている。一方で、「両国の前には依然として過去の歴史、福島の汚染水放出など複合的な課題が残っている」とし、「特に歴史問題は未来志向的な関係構築のため必ず解決しなければならない課題」との認識を示した。『聯合ニュース』(5月9日付)が報じた。つまり、歴史問題は未解決という立場だ。
韓国が、徴用工や慰安婦の問題を持ち出す可能性がゼロではない。日本が、応じないことを承知で持ち出すのであろう。日韓関係が,再び緊張状態へ戻る懸念は十分ありうるのだ。日本は、「解決済み」として毅然と対応するほかない。
韓国経済にとって、李氏が政権につくことは最悪ケースとなろう。それは、韓国の抱える構造問題がすべて左派政権によってつくられてきたからだ。その内情は5月8日、政府系シンクタンクの韓国開発研究院(KDI)によって、「潜在成長率見通しと政策的示唆点」で明らかにされている。
KDIは、韓国の潜在成長率を次のように予測している。
<韓国の潜在成長率予測>
2025~2030年:1.5%
2031~2040年:0.7%
2041~2050年:0.1%
年間単位で見ると2047年ごろにマイナスに転じる。少子高齢化で、生産年齢人口が急減し、労働投入および資本投入増加率を引き下げる結果である。KDIが、2022年11月に出した数値(2041~2050年0.7%)よりも著しく悪化している。
韓国に、潜在成長率の急低下を防ぐ手立てはあるのか。KDIは、次の政策を提案している。
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