いま非常に注目を集めている銘柄、アドバンテスト<6857>について深掘りしていきます。多くの方がその好調な業績に注目している一方で、「リスクはないの?」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、アドバンテストの素晴らしい点だけでなく、潜在的なリスクに焦点を当てて詳しく解説します。リスクを理解することで、過度に熱くならず、冷静な視点でこの銘柄と向き合うことができるはずです。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
半導体テストシステムの巨人
まず、アドバンテストがどのような企業なのかを簡単に説明します。
アドバンテストは主に3つの事業を展開していますが、その中核を成すのが半導体テストシステム事業です。このテストシステム事業は、売上高の約8割弱、利益の約9割を稼ぎ出しています。
具体的にどのようなテストを行っているかというと、製造されたチップが正常に動作するかどうかを検査する事業です。特に、SOC(System on Chip)テストシステムとメモリテストシステムがあり、近年はSOCテストシステムが大きく成長しています。SOCとは、様々な半導体を組み合わせて機械の頭脳を1つにまとめたチップのことで、昨今のAI半導体やスマートフォンのチップなどに使われています。
アドバンテストは、この脳となるメインのチップをテストする分野で非常に高い成長を遂げているのです。
NVIDIAとの強固なパートナーシップが成長を加速
アドバンテストの主要顧客には、NVIDIAやインテルといったチップ設計会社、そしてTSMCのような半導体の製造を請け負うファウンドリ企業などが含まれます。中でも、NVIDIAとの関連性が非常に深いことが、アドバンテストへの注目度を高めています。
NVIDIAはAI半導体には欠かせないGPU(画像処理装置)を製造しており、アドバンテストはそのGPUのテストに不可欠なパートナーとして選ばれています。NVIDIAのチップが多く生産されればされるほど、アドバンテストのテストシステムの需要も高まるという構図です。
なぜNVIDIAとの関係がそこまで重要なのでしょうか?それは、テストシステムがチップの設計・開発段階から量産まで、様々な工程で必要となるためです。NVIDIAのようなチップ設計開発を行う会社がアドバンテストのテスターを採用すると、その後の工程、例えばTSMCのようなファウンドリや最終組み立てを行う企業でも、互換性や整合性を保つために同じアドバンテストのテスターが使われることになります。
つまり、NVIDIAのような設計会社の「心を掴む」ことが、この業界では極めて重要であり、アドバンテストはそれを実現しているのです。NVIDIAのアニュアルレポートでも、アドバンテストは重要なパートナーとして記載されています。
圧倒的な市場シェアと好調な業績
アドバンテストは、これから求められるチップの検査に必要な技術に焦点を当てて研究開発を進めており、その結果、競合である米国のテラダイン社を大きく引き離す高い市場シェアを誇っています。
特にSOCテスターの分野では、直近で56%のシェアを持っています。これはAI半導体、スマホ、高性能コンピューターに使われるチップのテスター市場で過半数を占めることを意味し、事実上ほぼ独占的な地位に近いと言えるでしょう。この、業界で最も伸びている高性能で複雑なチップのテスター市場をアドバンテストが抑えているため、半導体市場全体の拡大以上に、アドバンテストの業績は伸びている印象を受けます。
業績を見てみると、2021年3月期、2022年3月期以降に大きく伸びています。2024年3月期は一時的な落ち込みがあったものの、その後は再び成長軌道に戻っています。特に、足元の2025年3月期にかけての伸びは非常に大きいと予想されています。
この好調な業績に合わせて、株価も急伸しており、2023年から足元にかけて約1年半で約5倍にまで上昇しています。この急騰は、生成AIブームとNVIDIAのGPU需要の高まりに対する期待、そしてそれを上回る実績に起因していると言えます。