物価上昇で死活問題に…
次に「物価上昇に伴う控除対象外消費税の支払い増加」について考えます。
まず「消費税」は、本来、事業者の負担を求めるものではなく、商品やサービスの最終的な消費者が負担するものです。事業者は売上に係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除し(仕入税額控除)、差額を納付するものです。消費税は、本来事業者にとって「実質的な負担」となるものではありません。
ところが、公的医療保険でカバーされる医療(社会保険診療)は非課税取引です。したがって、医療機関等が社会保険診療を提供する際に、患者から消費税を受け取ることはありません。
でも、医療機関等が社会保険診療を行うために医薬品や設備等を仕入れる際には消費税を支払っています。
社会保険診療が非課税取引であるが故に「仕入税額控除」ができず、医療機関等が仕入れに際して支払う消費税は「医療機関等のコスト」になっています。
物価急騰に伴って病院の負担する「医療機関等のコスト(控除対象外消費税)」も増しています。
病院が負担する「消費税コスト」を、本来なら診療報酬に上乗せされることになっています。しかし、社会保障維持の観点から、病院経営赤字の原因としての「診療報酬引き上げ」が厳しい状況にあることも事実です。
収益の柱とも言える診療報酬は公定価格ゆえに「病院がコスト増を理由に引き上げる」ことができないことが主な要因となっています。
なにより“社会の空気”が、診療報酬を引き上げることに拒否反応を示しているような気がします。
政府ができることは?
日本の医療をどうしたいのか…。
政府としても動いてはいます。病院経営維持のための補助金などの制度はあります。政府もこうした状況を重くみて、2024年度補正予算に病院経営を支援する補助事業(医療施設等経営強化緊急支援事業実施要綱)を盛り込みました。補助額は、5床以上の優勝診療所は「許可病床数×4万円」、4床以下の有床診療所及び無床診療所、訪問看護ステーションで1施設18万円となっています。
国立大学病院長会議の大鳥精司会長は「医療現場では、新たな医療機器の購入や老朽化した設備の更新ができないといった問題が起きている。このまま支援がなければ、大学病院は間違いなく潰れてしまう」と危機感を示しました。
このままの状況が続けば、地域医療を支える自治体病院の経営悪化によって、特に地域の基幹病院では医療機能の維持が困難となり、結果として医療崩壊につながることが予想されます。
最後に、医療関係者の専門サイト「m3.com」の記事を紹介します。記事のタイトルが「開業医63%・勤務医52%『身近に閉院した医療機関がある』」です。この記事にある「閉院の理由」に注目します。ランダムに拾っていきます。
・患者さん減少と経費の増加で経営状態が悪化
・外来のみで病棟閉鎖になり病院の淘汰の時代
・診療報酬改定を受けて大幅に収入が減ったなどを理由とした閉院
・電子カルテへの苦手意識や導入負担を理由に、義務化を前に閉院を検討している
・サービス残業が増えている診療科もある
・先進医療を行う病院の経営は難しいのだろう。このままでは全国の国立大学病院は潰れていくだろう
・高齢引退、新規での落下傘開業がない
・患者離れ、施設の老朽化
・医師の高齢化、継承者がいない。地方都市(人口17万人)では普通の光景
・デジタル移行に伴う様々な手続きに対応できない
・スタッフ不足引用:m3.com「開業医63%・勤務医52%『身近に閉院した医療機関がある』」
<初月無料購読ですぐ読める! 8月配信済みバックナンバー>
※2025年8月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
- らぽ~るマガジン第696「全国国立大学病院の7割が赤字、このままでは医療崩壊が…」(8/11)
- らぽ~るマガジン第695「大阪・関西万博会場には『TSUNAMI』は来ない…のかな?」(8/4)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2025年8月11日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>
※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込330円)。
- らぽ~るマガジン第694「8月1日に、参議院選挙を受けての臨時国会が召集されます。」(7/28)
- らぽ~るマガジン第693「参院選挙与党大敗、マーケットはどうなるのか…(再送)」(7/21)
- らぽ~るマガジン第693「」(7/21)
- らぽ~るマガジン第692「通常国会、積み残した重要法案」(7/14)
- らぽ~るマガジン第691「日本は「四季」から「二季」へ…」(7/7)
『
らぽーる・マガジン
らぽーる・マガジン
』(2025年8月11日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
らぽーる・マガジン
[月額330円(税込) 毎週月曜日]
絶対に知るべき重要な情報なのに、テレビなどが取り上げないことで広く知らされていないニュースを掘り起こし、また、報道されてはいるけどその本質がきちんと伝わっていない情報も検証していきます。情報誌は二部構成、一部はマーケット情報、マーケットの裏側で何が動いているのかを検証。二部では、政治や時事問題、いま足元で何が起こっているのかを掘り下げていきます。“脱”情報弱者を求める人、今よりさらに情報リテラシーを高めたい人はぜひお読みください。CFP®資格の投資ジャーナリストが、毎週月曜日にお届けします。







