経営資源の分散と組織体制への懸念
<周辺事業への進出(経営資源の分散)>
ニトリは、家具以外にも、洋服や家電、ホームセンター事業(島忠の買収)など、周辺事業への経営資源の分散が見られます。これは、数年に一度しか買われない家具の代わりに、頻繁に来店してもらうための策と考えられます。
しかし、周辺事業をがんばるあまり、本来の事業である「家具」の本体が本当に頑張れているのかという疑問が生じています。例えば、島忠買収後も、ホームセンターの中で家具屋なのか、その立ち位置が曖昧になっているように思えます。
<海外事業の苦戦と資産効率の低下>
成長戦略として進めている海外事業も、必ずしも上手くいっていません。
第1四半期末時点で、海外店舗数は199店舗あり、これは国内839店舗と合わせて総店舗数1038店舗の2割弱を占めます。しかし、海外での売上高は全体の10%を超えていません(企業は売上高の10%超で地域別開示義務が発生しますが、開示されていないため)。
海外展開でも成功し、大幅に収益に貢献しているユニクロと比較すると、ニトリは海外展開で大きく遅れをとっている印象があります。
結果として、島忠買収や海外展開といった資産の増加に対して、売上が伴っていないため、資産効率の低下を招いています。総資産回転率(売上が資産の何倍であるかを示す)は、かつて1回を超えていましたが、現在では0.76回程度まで下落しています。ニトリは「膨張しているが、その膨張ほど売上も利益も取れていない」状況です。
<創業会長への依存と幹部の辞任>
ニトリのこれまでの成長は似鳥会長の力によるものですが、組織体制は似鳥会長のワンマン的な色が強いです。
最近では、この体制にほころびが見え始めています。
- 須藤副社長(ホームセンター事業統括):今年1月に辞任
- 武田副社長(海外事業統括):今年9月末に辞任
特に武田氏の辞任は、ニトリの海外部門という巨大な事業を任されていたにもかかわらず、「新しい事業をやりたい」という理由でした。これは、会長からのプレッシャーなど、副社長としての立場が厳しかったことを推測させます。実際、武田氏の辞任直前には、中国での18店舗の閉鎖(整理モード)が発表されており、海外進出のいったんの失敗が表面化していました。
<会長直轄体制による商品開発の強化>
似鳥会長自身も、既存店客数の改善のため、自らの直轄で商品開発を進めると表明しています。円安による値上げで客数が減ったことを認識し、「アジア中の産地を足で回っていた原点に戻り、いいものを安く売れる開発を進め、値下げをしていきたい」としています。
会長が開発部門のトップに就任し、年間新商品を2倍にする方針も示されています。
しかし、これだけ巨大化したニトリにおいて、未だに会長が直轄でなければならない組織体制であることは、長期的な成長に向けた組織の仕組みができていないことの表れであり、懸念が残ります。後任者もすぐには置かず、似鳥会長を中心にテコ入れを図る方針であることも、組織の厚みの不足を露呈しています。
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