ペロブスカイト太陽電池が抱える5つの主要課題
高い期待が寄せられるペロブスカイト太陽電池ですが、実用化と普及に向けてはいくつかの大きな課題が山積しています。
<課題その1:耐久性と発電コスト>
最も大きな課題の一つは、既存のシリコン系太陽電池と比較して、発電コストが高いことと耐久性が低いことです。
- 発電コスト:
- 耐久性:
2030年時点の予測では、既存のシリコンパネルの発電コストが約6円/kWhであるのに対し、ペロブスカイト太陽電池は約14円/kWhと、2倍以上になると見込まれています。しかもこの14円という数字は、政府の補助金を前提として、政策の力を借りてどうにか達成できる水準です。政策の後押しがなければ、競争力のあるコストにはなりません。
ペロブスカイト太陽電池は薄い分、耐久性が既存のものよりかなり落ちます。最新のものでようやく10年から15年程度の耐用年数ですが、ほんの数年前までは5年から10年程度でした。既存のシリコン製太陽電池の耐用年数が20年から30年であることを考えると、設置する側にとっては、頻繁な取り替え作業のコストが大きな問題となります。なお、コストを14円/kWhまで持っていくための前提条件として、20年以上の耐久性確保が必要とされています。
<課題その2:生産技術の壁>
ペロブスカイト太陽電池を大規模かつ大面積で製造しようとする際、結晶を均一に薄く塗り付ける塗布技術が非常に難しく、現状では大面積のパネルをなかなか作りきれていない側面があります。実用化に向けては、研究開発コストや政府の補助金が必要となり、乗り越えるべき壁が多く残されています。
<課題その3:環境面のリスク(鉛の使用)>
製造過程で鉛を使用しない素材での量産化が課題となっています。
<課題その4:制度・規制の整備>
ペロブスカイト太陽電池を設置するための法規制や制度を今後整備していく必要があります。
<課題その5:中国リスク(競争の脅威)>
最も注視すべき課題が、中国との国際競争です。
既存の太陽光パネル市場では、かつて日本が世界シェアの40%以上を誇り、ピーク時には50%に迫る勢いでしたが、2000年代後半以降、中国が技術を取得し量産化に成功した結果、現在では中国が80%を超えるシェアを占め、日本はほぼゼロに等しい状況に追いやられました。
ペロブスカイト太陽電池についても、同じ轍を踏まないよう注意が必要ですが、実際には中国も活発に開発を進めています。
- 特許申請数:
- 国策としての推進:
- 技術レベル:
- 量産化の脅威:
中国のペロブスカイト関連の特許申請数は非常に多く、年間で日本の20倍以上に達しています。
中国政府は国策としてこの分野を強化しており、決定から補助金支給、民間企業のサポート、そして現場での研究開発のスピードが日本とは比較にならないほど速い状況です。
中国のペロブスカイト太陽電池の発電効率は、もはや日本と遜色がないレベルにまでなってきています。
中国は、電池関係やバッテリーなどの量産化と低コスト製造を得意としています。多くの中国企業が開発に取り組んでいる現状(プレイヤーの多さ)から見て、ペロブスカイト太陽電池の汎用モデルについては、今後中国が覇権を握る予兆があります。
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄3選
ペロブスカイト太陽電池は、単一の企業ですべてを製造するわけではなく、フィルムや基盤、原料などを組み合わせるため、原料や材料を提供する企業に有望な企業が存在する可能性があります。
以下に、現時点で注目されている関連銘柄を3社紹介しますが、現時点では、これらの企業がペロブスカイト関連で大きな収益を上げている状況にはないことに留意が必要です。
<日本板硝子<5202>:薄膜用ガラスのメーカー>

日本板硝子<5202> 週足(SBI証券提供)
- 事業内容:
- 業績への影響:
薄膜太陽電池パネル用ガラス(TCOガラス)を製造しています。TCOガラスとは、ガラスの上に電気を通す透明な膜を形成したもので、ペロブスカイトの材料を水や外から守る高級バリアフィルムのような役割を果たします。
TCOガラスが含まれる事業の売上高は伸びていますが、事業全体の営業利益は下がっており、現時点ではTCOガラスが業績を牽引する状況にはなっていません。収益貢献度はまだ高くないと言えます。
<積水化学<4204>:ハイエンドなフィルム型を開発>

積水化学<4204> 週足(SBI証券提供)
- 事業内容:
- 業績への影響:
ペロブスカイト太陽電池の種類のなかでも、最も薄く、軽く、曲げられるフィルム型の開発を手掛けています。フィルム型は、設置の自由度が最も高く、耐久性とコストが改善されれば、非常に期待されるハイエンドな種類です。
現在、100MW分の生産ラインを新設中で、2027年稼働予定です。2028年にフル稼働した際に黒字転換できるよう事業を推進する計画ですが、現時点では収益化には至っていません。